ラット誘発絨毛上皮腫の細胞増殖機能に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
人の細胞はすべてhomeostatic controlを受けており,数ヵ月のうちに腫瘍にも似た増殖を営む胎盤trophoblastもこの例外ではなく,この細胞もhomeostatic controlの基に制御されたlife spanを有すると言われている.この様な制御機構から逸脱した細胞の集団が悪性腫瘍であり,胎盤trophoblastのそれが絨毛上皮腫である. そこで著者はDNA-precursorである^3H-TdR, ^<14>C-TdRを用いて正常ラット胎盤trophoblast並びにDMBA, 4NQ0投与により誘発したラット絨毛上皮腫についてcell kineticsの比較検討を行ない,両者の細胞生物学的性格の差異を明らかにすべく実験を行ない,以下の如き結論を得た. (1) 正常ラット胎盤では妊娠第12日目に最高の標識率を示し,それ以降漸次減少するpatternを描き,かつ標識率の上から第12日目及び第17日目を境とする3期に分けられた.一方誘発絨腫の標識率は平均30.9%と高く,かつ症例によるばらつきが大と認められた. (2) 細胞核当りのgrainの数は正常trophoblastでは10-20にmodeを示し,絨腫では一様でなく,かつmodeの右方移動を認めた. (3) 正常ラット胎盤のS期は4.2〜6.9時間の間であり,妊娠日数やtrophoblastの種類による差を認めなかつた.絨腫のS期は7.8〜12.0時間とかなり幅がみられ,このS期の延長を絨腫の特徴と認めた. (4) 正常ラット胎盤のgeneration timeは,labyrinth 12.8時間,s.b.c. 14.8時間で,一方絨腫のそれは16.2時間と算定された. (5) 誘発絨腫では正常胎盤に比べ,はるかに高いgrowth fractionが認められた. (6) 以上の成績より誘発絨腫細胞は正常胎盤trophoblastとspectrum of ranging cellにあるというより,むしろmutationとしての癌性性格を有する細胞として認められた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-02-01
著者
関連論文
- 35. 核酸合成能から見た人及びラット誘発の絨毛上皮腫に関する細胞変異性の解析 (第3群 絨毛性腫瘍 (33〜44))
- 36. ラット誘発絨毛上皮腫の組織発生
- 28. ラットを用いた絨腫誘発実験
- 絨毛上皮腫の発生と予後に関する研究
- 105. 実験的FGR胎盤の核酸合成能
- ラット誘発絨毛上皮腫の細胞増殖機能に関する研究