C 型食道閉鎖症における下部食道の移動と術後合併症
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概要
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【目的】C型食道閉鎖症における上下食道間距離を正確に計測することは困難であり, 術後合併症の要因となる吻合部の緊張を評価するためには下部食道の移動の程度を知る方が実利的である.そのための方法を開発し検討できたので報告する.【方法】気管食道瘻(TEF)を切離する際に, そこを小クリップでマーキングする.吻合終了時と術後の透視写真上でクリップから吻合部までの距離(移動長)を測定する.同時にクリップの位置を同定し, 下部食道長を計測する.移動長を吻合前の下部食道長で除して移動率(延長率)を算出する.【結果】33例を対象にした.TEFの位置は第1.5から6.0胸椎までばらつき, 平均では第3.9胸椎にあった.吻合部の位置は第1.5胸椎から第4.0胸椎まであり, 平均では第3.3胸椎の高さにあった.吻合によって下部食道は切離部より上下に移動したが, 移動長は術中の計測で, 口側へ15mmから胃側へ14mmまであり, 平均3.1mm, 術後1週でも平均3.7mmで, ともに口側へ移動していた.吻合後の下部食道の長さは平均で62.5mmであった.下部食道の延長率は16.4%縮んだものから47.7%引き延ばされたものまであり, 平均で7.6%引き延ばされていた.延長率は統計学的に移動長の約2倍の数値で回帰した.合併症として縫合不全とTEF再開通は認めなかった.狭窄を認めた4例と, 胃食道逆流現象(GER)を認めた5例では, 認めなかった例と比較してTEFの位置は有意に低く, 下部食道の移動長は長く, 延長率は大きかった.しかし, 吻合部の位置には差を認めなかった.【結語】吻合部の緊張は吻合部がTEF切離部より口側に移動した症例で問題となる.そして下部食道の移動長が5mm未満であれば緊張は軽度であり, 術後にも問題は生じない.それに対して5mm以上になると, 下部食道の10%以上の延長率となり, とくに10mm以上になった症例では20%以上の延長率から強い緊張が加わっているといえる.そのような場合には術後の強制換気期間を5日以上とした厳重な管理を行い, かつ, 狭窄とGERの発生に対応する用意が必要となる.
- 特定非営利活動法人日本小児外科学会の論文
- 2002-08-20
著者
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甲斐田 章子
久留米大学小児外科
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加藤 純爾
愛知県心身障害者コロニー中央病院小児外科
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長屋 昌宏
愛知県心身障害者コロニー中央病院小児外科
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加藤 禎洋
愛知県心身障害者コロニー中央病院小児外科
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田中 修一
愛知県心身障害者コロニー中央病院 小児外科
-
加藤 禎洋
岐阜県総合医療センター小児外科
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甲斐田 章子
愛知県心身障害者コロニー中央病院小児外科
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新美 教弘
愛知県心身障害者コロニー中央病院外科
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