Tumor Necrosis Factor-αによる血管内皮細胞からのManganese Superoxide Dismutaseの誘導と放出
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概要
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Manganese Superoxide Dismutase(Mn-SOD)は活性酸素消去酵素の一つであり, 卵巣癌患者の新しい腫瘍マーカーとして有用であることが知られている. そこで, 卵巣癌患者における血清中Mn-SODの発現機構につき, 血管内皮細胞を用いサイトカイン(特にTNF-α)との関連において検討した. 1. 卵巣癌由来細胞株A2780, KURAMOCHI, 子宮頚部癌由来細胞株ME180, Hela, 肺癌由来細胞株A549を用いてTNF-αの増殖抑制効果を検討し, さらにTNF-αによるMn-SODの細胞内での発現をMn-SODモノクローナル抗体を用いたELISAで検討した. ME180はTNF-αの増殖抑制効果に対し感受性が認められたが, その他の細胞株は抵抗性であった. ME180はTNF-αによるMn-SODの増加は認められなかったが, その他の細胞株では増加を認め, 特にA549での増加が著しかった. 2. ヒト臍帯静脈より採取した血管内皮細胞に対するTNF-αの増殖抑制効果を検討した. 内皮細胞もTNF-αにより増殖抑制されたが, ME180に比べると感受性は低かった. そこで, 細胞中と培養上清中の乳酸脱水素酵素を測定したところ, 内皮細胞, ME180に対する増殖抑制はTNF-αの細胞傷害作用によるものと判明した. 3. TNF-αによるMn-SODの細胞内での発現を内皮細胞においても検討した. 内皮細胞でもMn-SODの著明な増加がみられた. そこで, 培養上清中のMn-SODを検討したところ, 内皮細胞においてはA549, ME180に比べTNF-α刺激後, 培養上清中のMn-SODが継時的に, 濃度依存的に増加した. 4. イムノブロットによると, 培養上清中のMn-SODの分子量に変化なく, つまり何ら修飾を受けずに, ミトコンドリアが破壊されて漏出したものであるということが判明した. 以上の結果から, 卵巣癌患者血清中Mn-SOD上昇の機序として, 癌細胞や活性化リンパ球により産生されたTNF-αなどが血管内皮細胞中のMn-SODを誘導し, さらに内皮細胞を一部傷害することにより血清中にMn-SODタンパクを放出する一連の過程が推測された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-12-01
著者
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