妊娠分娩時の母児双方でのcortisol動態とその意義
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概要
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妊娠分娩時の母児双方におけるglucocorticoidsは,妊娠の維持,分娩の発来などにも関連して役割りを演ずるともいわれている.しかし,その詳細がなお明らかでないため,著者はこのことを中心にその意義を明らかにすることを目的として,妊娠分娩時の母児の血中glucocorticoids就中cortisolを分離測定して,次の如き成績を得た. 1. 母児の末梢血cortisol濃度は妊娠の経過に伴い一定の相関性をもつて増加し(r=0.760),その末期にはともに妊娠20週の濃度(181±37ng/mlと25.5±6.8ng/ml,平均値±標準偏差)のほぼ2倍(554±207と110.4±17.8)に増加した. 2. 妊娠末期における母体血cortisol濃度の日内変動は平均28.8%であり,6時に最高値を,18時あるいは零時に最低値を示すリズムを示した. 3. 妊娠末期に母体側へACTHを負荷するとcortisol濃度は上昇し60分後にピークとなるが,妊娠17週から21週の流産児のそれでは5〜15分後に2倍以上の増加をすることを認めた. 3. 陣痛発来前の母体血cortisol濃度は一定の傾向がなく,陣痛発来後急増し児娩出の直前に2ないし3倍に著増した.次に,自然陣痛発来後の経腔分娩例(SVD),陣痛未発来の帝王切開例(ECS),陣痛発来後の帝王切開例(ICS)とoxytocinによる陣痛誘発後の経腔分娩例(OID)で,それぞれ分娩直後における母児双方のcortisol濃度を比較すると,4群ともに,母体末梢血>〓帯動脈血>〓帯静脈血の順となつた.また,母体末梢血と〓帯静脈血のそれでは,ECS<OID<ICS<SVDとなり,自然陣痛発来後の分娩例(SVD+ICS)は未発来分娩例(OID+ECS)より有為に高かつたが(p<0.001) OIDとECSに有為の差を認めることができなかつた.次に,〓帯動脈血ではECS<OID<SVD<ICSとなり,自然陣痛発来後の分娩例(ICS+SVD)は未発来分娩例(OID+ECS)より有為に高く(p<0.001),またSVDとOIDの間に有意の差があり(p<0.05),OIDとECSとの間にこれを認めることができなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-11-01
著者
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