Ia期卵巣癌の取り扱い : 術後化学療法省略の試み
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概要
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1984年から1992年までの9年間に筑波大学付属病院産婦人科で治療した胚細胞性腫瘍を含んだ卵巣悪性腫瘍96例に対して, 卵巣癌基本術式として, 腹式単純子宮全摘術, 両側付属器切除術等に加え, 傍大動脈リンパ節を含む後腹膜リンパ節郭清術を初めとする拡大手術を行い正確なstagingに努めた. 術前診断が良性腫瘍であり, 基本術式が施行されなかったものは, 引き続いてre-stagingのために再開腹し基本術式の追加を行った. この結果Ia期と診断された症例に対しては, 術後化学療法を省略することの可否についてProspective studyを行った. 1. 卵巣悪性腫瘍96例中Ia期症例は30例31.3%であった. また, これはI期症例44例の68.2%に相当した. 2. 術中所見で病巣が片側卵巣に限局しIa期と思われた症例36例のうち6例が術後病理診断でupstageされた. その内訳は後腹膜リンパ節(傍大動脈リンパ節を含む)転移のためIIIc期に分類された症例4例, 大網に顕微鏡的播種巣を認めたためにIIIa期に分類された症例1例, 腹腔内細胞診陽性のためIc期に分類された症例1例であった. 3. Ia期の組織型は, 粘液性嚢胞腺癌が15例50%と最も多かった. また, 分化度はLPM, 高分化型腺癌がほとんどであり, 低分化型腺癌は30例中1例であった. 4. 観察期間中, 1例が10ヵ月後に再発死亡したが, この症例はIa期唯一の低分化型(類内膜)腺癌であった. 残りの29例(96.7%)は術後化学療法を省略したが, 再発なく生存している. 以上の結果より, 後腹膜リンパ節郭清術を含んだ拡大手術により正確なstagingに努めることにより, 肉眼的に片側卵巣に限局していると思われるような症例でも高頻度に卵巣外に進展していることが明らかとなった. また, 正確にstagingされたIa期症例に対しては, 組織分化度を十分考慮し, 高分化型腺癌に限って術後化学療法を省略すべきと考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-10-01
著者
-
沖 明典
筑波大
-
佐藤 豊実
NTT東日本関東病院
-
久保 武士
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
角田 肇
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
沖 明典
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
佐藤 豊実
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
市川 喜仁
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
西田 正人
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
西田 正人
茨城県総合健診協会細胞診断委員会
-
有沢 ゆう子
筑波大学臨床医学系産婦人科
-
有沢 ゆう子
筑波大学 産婦人科
-
久保 武士
筑波大学臨床医学系
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