胎児血管径の実時間変位計測法の開発に関する研究
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概要
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超音波断層下に胎児動脈血管前, 後壁内面の反射エコーを目印にして追跡するエコートラッキング法により胎児動脈血管の拍動波形を計測する装置を開発し, カテーテル圧波形, 血流速度波形と比較検討した. 本システムは, 振動子から近位血管前壁内面と遠位血管後壁内面の反射エコーの時間差(距離)の経時的変化を表示する. 超音波をパルス送信し, 反射波と基線との交点(ゼロクロス点)を電子回路にて追跡し, フェイズロックループを採用しているため, 反射波の強弱に影響されず, 安定した計測が可能である. 拍動波形は, 圧波形(成人)との比較では, 下行大動脈, 大腿動脈, 上腕動脈で両波形の相似性を確認し, 径変化が圧の変化分に対応すると考えられた. 本法の精度と再現性について胎児下行大動脈径の発育に伴う増加を考慮し, 妊娠22〜38週で5系列の測定群を設定したが, 最小血管径では, 再現性, 測定者間の変動係数は4%以内で拍動変位分の測定では8%以内であった. 正常発育胎児20例(18〜41週)を4週ごとに測定した結果は, 38週以降拍動波形と血流速度波形の類似性を認め拍動変位分, 平均血流量は増加したが, 拍動変化率(拍動変位分/最小血管径)は有意な変動を示さなかつた. Pulsatility Indexが高値を呈した34〜37週の子宮内発育遅延児5例, 巨大児3例の測定結果では前者は, 両波形の解離を認め拍動変位率は7.26±0.36%, 平均血流量は5.5±1.2ml/secで34〜37週の正常発育胎児20例(10.14±1.95%, 8.3±1.9ml/sec)に比し有意に小さく(p<0.01)後者は, 両波形の相似性を認め, 12.20±0.50%, 10.8±0.8ml/secで正常発育胎児に比し有意に大きかつた(p<0.05). 血流速度波形に比し, 拍動波形は血圧の変動を示すため, 血流量の評価は両波形の組み合わせによつてさらに, 正確に評価可能であると考えられた.
- 1992-12-01
著者
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