男性不妊患者における精子微細構造の異常と受精能力との関連性
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概要
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男性不妊患者の精子の受精能力を評価するうえでの, 精子の微細構造の異常の意義について検討した。体外受精を施行した男性不妊患者38例38周期について, 体外受精に用いられた精液から透過電子顕微鏡の精子標本を作製した。患者は, 受精が成立しなかった受精不能群20例と受精が成立した受精成立群18例とに分類した。各患者の透過電顕による精子頭部及び尾部の正常形態及び種々の形態異常の出現頻度 (精子100個当り) を算定し, 2群間で比較検討した。また, その結果をもとにした2群間の判別の可能性を, 判別分析にて検討した。1) 精子の頭部所見では, 受精成立群は受精不能群と比較して, 正常頭部の頻度が有意に高率 (27.9±15.4%対9.6±13.3%, p<0.001) で, 先体の異常 (62.3±16.4%対78.9±17.6%, p<0.01), 核の形態異常 (14.5±7.2%対24.9±13.3%, p<0.01) は有意に低率であった。2) 正常尾部の頻度は受精成立群で有意に高率 (64.9±20.2%対47.7±18.9%, p<0.05) であった。尾部の異常所見の中では, 辺縁双微細管の欠損の出現頻度が, 受精成立群で有意に低率 (9.3±5.9%対15.8±9.4%, p<0.02) であったが, その他の異常所見には有意差は認められなかった。3) 変数増加法で, 正常頭部, 辺縁双微細管の欠損, 核の形態異常の3個の変数が選択され, これらの所見を用いた判別分析による見かけの的中率は84%であった。男性不妊患者の精子の形態を透過電顕により詳細に分析することにより, 光顕の観察では明瞭でない先体の異常や尾部の異常の正しい評価が可能となった。これは男性不妊患者の精子の受精能力を評価するうえで, 極めて有意義なものと考えられる。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-11-01
著者
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