上皮性卵巣腫瘍の性ステロイドホルモンの局在とレセプターについて : とくに類内膜癌を中心として
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概要
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卵巣癌は無症候性に経過するものが多いが卵巣類内膜癌では高率(58%)に不正出血, 閉経後出血を認めた. そこで卵巣類内膜癌を中心とする卵巣腫瘍組織の性ステロイドホルモン産生分泌能およびレセプターを検索しその意義を検討した. 1) 閉経後出血を来した3例の上皮性卵巣腫瘍患者の術前血中Estradiol (E_2), Progesterone (P)値は正常値より数倍高値であったが腫瘍摘出により正常値に復した. また, 手術時卵巣静脈血中E_2, P, Testosterone (T)値は末梢血より3〜7倍高値であった. 2) 免疫組織染色(PAP法)により性ステロイドホルモンの腫瘍内局在を25例の腺癌について検討した. 類内膜癌9例ではE2, Pは両方ともに腫瘍細胞3/9例, 間質細胞7/9例が陽性であったのに対し他の腺癌ではE_2は各1/16例, Pは腫瘍細胞3/16例, 間質細胞2/16例が陽性を示した. 3) PAP法で腫瘍組織間質細胞のE_2が陽性と判定された類内膜癌6例中4例(67%)と他の組織型で陽性であった2例中1例(50%)は機能性子宮出血を示した. 4) 卵巣上皮性腺癌26例のcytosol エストロジェンレセプター(ER), cytosol プロジェステロンレセプター(PR)をDCC法で検索した. 卵巣類内膜癌3例は全例陽性で平均ER 102fmol/mg, PR 845fmol/mgであり, 他の腺癌のER 9〜23fmol/mg (陽性率57%), PR 11fmol/mg (陽性率7%)に比しその値も陽性率も著しく高かった. KCl抽出液レセプターを検索した10例中8例でcytosolとKCl抽出液レセプターの陽性陰性判定結果は一致し, 他の2例もKCl抽出液陽性, cytosol陰性であった. 卵巣腫瘍のある種のもの, とくに卵巣類内膜癌では, 高率に間質組織などから性ステロイドが産生され機能性子宮出血を惹起すること, およびその組織発生過程において腫瘍細胞の主に核内にER, PRを多量に産出するようになり, 間質組織からの性ステロイドの作用を受ける可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1990-01-01
著者
-
武田 佳彦
東京女子医大産婦人科
-
井口 登美子
東京女子医科大学産婦人科
-
井口 登美子
東京女子医科大学 解剖
-
武田 佳彦
東京女子医大
-
滝沢 憲
東京女子医科大学産婦人科学教室
-
佐藤 美枝子
東京女子医科大学産婦人科学教室
-
横尾 郁子
東京女子医科大学産婦人科学教室
-
横尾 郁子
虎の門病院
-
稲生 由紀子
東京女子医大
-
佐藤 美枝子
東京女子医科大学
-
滝沢 憲
東京女子医科大学産婦人科
-
稲生 由紀子
東京女子医科大学産婦人科学教室
-
井口 登美子
東京女子医大・第二病院
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