重症心身障害児の脂質構成に着目した栄養管理に関する基礎的検討

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【目的】重症心身障害児(以下,重心患児)に投与されることの多い従来の経腸栄養剤は脂質構成が不適当なものが多かった.そこで,至適な脂質構成の経腸栄養剤(n-6/n-3比が低く,中鎖脂肪酸の割合が高い)投与による代謝・栄養面で影響に関する基礎的検討を行った.【方法】Nissen術後重心患児6例(2〜23歳)を対象とした.変更前の経腸栄養剤投与熱量と同一で,n-3系脂肪酸・中鎖脂肪酸強化経腸栄養剤(n-6/n-3比=3,中鎖脂肪酸750mg/製品100ml,中鎖脂肪酸の脂質重量構成比は34%)に変更し,投与前,投与後2週,4週,8週の(1)rapid turnover protein (RBP, Prealbumin, Transferrin),(2)血清n-6/n-3比,(3)血清Diamine Oxidase (DAO)の推移を検討した.【結果】(1)栄養状態の指標となるrapid turnover protein は,いずれも投与前後で変動を認めなかった.(2)投与前の血清n-6/n-3比は24.2±13.6であり,対照(6.2±2.9)に比べて有意に高かったが(p<0.001),投与後4週で9.0±1.3と,ほぼ正常範囲まで改善していた.(3)小腸機能の客観的指標である血清DAO値は,投与前は5.3±3.3units/lであったが,投与後4週で8.7±2.7 units/lとなり,以後,対照(5.5±3.1units/l)の上限で平衡に達し安定した.【結論】従来の経腸栄養剤で管理された重心患児の血清n-6/n-3比は異常高値を呈するが, n-3系脂肪酸強化経腸栄養剤を4週間投与することにより正常化し,さらに小腸機能の増大が示唆された.今後は,n-3系脂肪酸の自己免疫系の賦活化作用や抗炎症作用を期待して,重心患児に対する周術期栄養管理への効果の有無を検討する予定である.
日本小児外科学会の論文
2003-10-20

重症心身障害児の脂質構成に着目した栄養管理に関する基礎的検討

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