ハードル走のバイオメカニクス的研究 : スプリントとの比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ハードル走速度を決定する要因を明らかにするため, ハードル走(踏切, 着地, 1歩目, 2歩目)の下肢動作を動作学的側面と動力学的側面から分析し, スプリント時の値と比較しながら検討した結果, 以下のことが明らかとなった. 1) ハードル走においては, 身体重心の水平方向の速度はハードルの踏切で減速し, 着地とハードリング後の1歩目, 2歩目で加速した. 2) ハードル走速度の高い選手ほどハードルの踏切における支持期前半の身体重心の減速量が少なかった. また, この減速量は踏切脚の接地の瞬間の母指球と身体重心の水平距離が小さいほど少なかった. 3) ハードル走速度の高い選手ほど, 踏切前の踏切脚のもも上げ速度とその時点の股関節屈筋群の仕事量と平均パワーが高く, そのことが踏切足の接地の瞬間の母指球と身体重心の水平距離を小さくした(スプリントに近づけた)と考えられた. その結果, 支持期前半の減速を引き起こす前方キックに関係する膝関節伸筋群の仕事量は逆に低下したのであろう. 4) ハードル走速度の高い選手ほど, ハードリング後の着地脚の振り戻し速度が高く, ハードリング時間も短かった. また, この時点の股関節伸筋群の仕事量は, ハードル走速度の高い選手ほどスプリントの値に近く, 振り戻し動作を積極的に行っていたことが示された. 5) ハードル走速度の高い選手ほど, 着地足を接地する瞬間の膝関節角度と支持期中間時点の足関節の最小角度が大きく(スプリント以上に大きい), 支持期前半の足関節伸筋群の仕事量が低かった. これは, 高い重心位置で着地し, 着地衝撃をより少なくするためのハードル走特有のものであると思われた. 6) 支持期に脚全体を後方ヘスウィングする最大速度は, 全ステップにおいてハードル走速度と有意な正の相関を示し, スプリントと同様の傾向を示した. これはハードル間のインターバル走とスプリントにおけるキック動作の類似性を示唆している. 7) 以上の結果をまとめると, ハードル走速度と有意な相関が認められた測定項目は, 踏切動作と着地動作に多く見られ, ハードリングの重要性を示唆するとともに, ハードル走速度の高い選手は踏切においてはスプリントに近い動作と筋活動を, 着地においては一部スプリントを強調したハードル特有の動作と筋活動を行っていたことが明らかとなった.
- 社団法人日本体育学会の論文
- 1997-11-10
著者
関連論文
- テニスのグランドストローク時におけるフットワークの基礎的研究
- 05-6-GYM-10 テニスのグランドストローク時における世界一流選手のフットワークに関する研究(05.バイオメカニクス,一般研究発表抄録)
- 短距離走動作の科学朝原宣治選手とタイソン・ゲイ選手の特徴
- 男子一流スプリンターの疾走動作の特徴--世界陸上東京大会との比較から (特集 世界陸上アスリートのパフォーマンス--東京大会から16年後の大阪大会)
- 一流短距離選手のスタートダッシュ動作に関するバイオメカニクス的研究 (特集 世界陸上アスリートのパフォーマンス--東京大会から16年後の大阪大会)
- 走速度およびストライドの変化が膝関節への力学的負荷に及ぼす影響
- 男子一流短距離選手のキック動作の特徴 (日本陸連科学委員会研究報告 第7巻(2008) 陸上競技の医科学サポート研究 REPORT2007)
- 世界と日本の一流短距離選手のスタートダッシュ動作に関するバイオメカニクス分析--特にキック脚動作に着目して (日本陸連科学委員会研究報告 第7巻(2008) 陸上競技の医科学サポート研究 REPORT2007)
- 短距離 2007年世界陸上大阪大会の100mおよび200mレースの見どころ
- 09-18-T001-07 サイドメディシンボール投げのパフォーマンスと身体能力との関係(09 体育方法,一般研究発表抄録)
- 05-18-S201-02 100mレースにおける歩隔の変化(05 バイオメカニクス,一般研究発表抄録)
- スタートダッシュから中間疾走までの着地位置の変化--特に歩隔に着目して
- 末續慎吾選手の200m走の特徴
- 553 アーチェリーのバイオメカニクス的研究 : とくにエイミング時の調整能について
- 09-7-K401-7 バスケットボールのスリーポイントショットの成功率に影響を及ぼす要因(09.体育方法,一般研究発表抄録)
- 09-11-8LBY-16 ハンドボール競技のシュート・ボールスピードに関わる投能力とトレーニング効果(体育方法3,09.体育方法,一般研究発表抄録)
- 05-10-8LBY-15 ローラースキーのダイアゴナル・ストライド走法における滑走速度と効率との関係(バイオメカニクス1,05.バイオメカニクス,一般研究発表抄録)
- 11-5-B302-5 踏切局面の指導を中心としたハードル走の授業 : 小学校6年生の事例(11.体育科教育学,一般研究発表抄録)
- 05-6-GYM-16 サイドメディシンボール投げにおける体幹の筋活動に関する研究(05.バイオメカニクス,一般研究発表抄録)
- 05-7-K302-7 EMS(電気的筋肉刺激)トレーニングの交叉効果(05.バイオメカニクス,一般研究発表抄録)
- 13-18-S305-04 知的障害者の筋出力特性に関する研究 : 瞬発的動作(押す・引く)から見た一考察(13.アダプテッド・スポーツ科学,一般研究発表抄録)
- 056G00110 ドロップジャンプにおける下腿三頭筋Pre-activationの働き : ドロップ高と跳躍高を変化させた場合(05.バイオメカニクス,一般研究発表)
- 054G00107 スタートダッシュにおける骨盤の動きと地面反力との関係 : 各歩数での変化(05.バイオメカニクス,一般研究発表)
- 最高疾走速度と接地期の身体重心の水平速度の減速・加速 : 接地による減速を減らすことで最高疾走速度は高められるか
- 短距離走に関する研究 : コーチングに役立つ科学的根拠を求めて
- やり投げのパフォーマンスと動作の関係
- 092 共 A30215 舞台における走り : 短距離走との比較
- 054 共 C50109 やり投げのパフォーマンスと動作の関係
- 接地のブレーキは必要不可欠 : ヒトの二足全力走行
- ジュニアスプリンター諸君へのアドバイス--熊本インターハイ100m男女優勝者の中間疾走フォームの特徴をもとに
- 短距離走のパフォーマンス向上にバイオメカニクス研究は役立つか?
- 13G21008 一流走幅跳選手の助走の疾走動作の特徴
- 共催S2601 スポーツにおける力と技
- 100m中間疾走局面における疾走動作と速度との関係
- ハードル走のバイオメカニクス的研究 : スプリントとの比較
- スタートダッシュにおける下肢関節のピークトルクとピークパワー,および筋放電パターンの変化
- 800mレース中におけるスピードの変化とピッチ, ストライド長の変化
- サスペンションに関するバイオメカニクス的見地からの考察--グランジュッテの場合
- 女子10, 000m走世界記録保持者のRunning techniques : '94アジア大会から
- アジア大会400m決勝のランナーの動作分析
- アジアトップスプリンターの疾走フォーム : 広島アジア大会男子100m決勝出場選手の動作分析
- アジアトップスプリンターのスタート・ダッシュにおけるフォーム
- 2歳児から世界一流短距離選手までの疾走能力の変化
- 051V13 ハードル走における関節トルクと関節パワー(05.バイオメカニクス,一般研究発表)
- 女子10, 000m走世界記録保持者のRunning techniques : '94アジア大会から
- 女子10, 000m走世界記録保持者のRunning techniques : '94アジア大会から
- 051V12 男子800m走におけるレース分析 : 対象,レース展開に注目して(05.バイオメカニクス,一般研究発表)
- 054国B18 走幅跳における「短助走跳躍」のバイオメカニクス的意義について
- 054国B08 ダンスの跳びに関する研究 : グランジュッテ(前後大開脚跳び)の浮きの表現
- 053国B05 子どもから一流短距離選手の疾走能力 : 2歳児から世界一流選手まで
- 0922101 スプリンターのキック技術
- 0531303 第3回世界陸上競技選手権大会男子100mにおける世界一流スプリンターのレース構造の分析
- 0531302 日本人トップスプリンターの疾走フォーム : C.ルイス、R.バレル、M.ジョンソン選手との比較
- 0531301スタート・ダッシュのキック動作 : 世界陸上におけるルイス,バレルと日本選手
- 0511321 スタートダッシュの下肢関節パワー
- 0511319 10〜12歳児のつま先ジャンプの反動効果
- VIII-P-5. 10〜12歳児のつま先ジャンプにおける反動効果(ポスターセッション,シンポジウムVIII:運動器系の発達,第4回体力医学会シンポジウム)
- 165.スタートダッシュの下肢関節トルクとEMG : 生活,バイオメカニクス
- 043G06 つま先ジャンプにおけるリバウンド効果 : 体操選手と水泳選手の比較
- 253. つま先ジャンプの反動効果 : 体操選手と水泳選手の比較 : 競技者の体力に関する生理科学的研究, トレーニングに関する生理科学的研究
- 051J05 "つま先ジャンプ"におけるリバウンド効果(5.バイオメカニクス,一般研究A)
- 161. 走運動における下肢関節トルクと筋活動 : 運動生理学的研究II : 第42回日本体力医学会大会
- 051108 疾走速度と下肢動作の関係(5.バイオメカニクス,一般研究B)
- 053110 全力疾走に及ぼすストライド変化の影響(5.バイオメカニクス,一般研究B)
- 052105 反動跳躍における下腿三頭筋の弾性エネルギー利用(5.バイオメカニクス,一般研究B)
- 041206 長距離走における腕振り動作の影響(4.運動生理学,一般研究B)
- 反動跳躍における"Electro-Mechanical Efficiency"
- 053205 反動跳躍におけるElectro-Mechanical Efficiency(5.バイオメカニクス,一般研究)
- 051309 短距離走中のElectro-Mechanical Efficiency(5.バイオメカニクス,一般研究)
- 051210 等速度走における至適歩幅と歩数(5.バイオメカニクス,一般研究)
- 11.走運動における筋放電量(入力)と機械的仕事(出力) : 運動生理学的研究II
- 519 ボールスピードに及ぼす種々関節運動の貢献度とエネルギー転移(5.バイオメカニクス,一般研究)
- 510 走運動のスウィング相における筋活動と関節トルク(5.バイオメカニクス,一般研究)
- その場かけ足運動における筋のエネルギ-出入力特性
- 18.ランニングにおける神経筋活動 : 筋放電量の出入力エネルギーからみた"効率"の分析 : 筋肉・神経のスポーツにおける意義
- 高速ランニングの効率:短距離・長距離ランナーの比較から : 運動生理学的研究 II
- 533 スプリント・ランニングの効率 : 短距離・長距離選手の筋持性比較
- 531 走運動における力学的エネルギーの転移と仕事算出法について
- 529 種々速度のランニングにおける短距離・長距離走者の筋活動
- 129.長距離選手と短距離選手の機械的効率 : 運動生理学的研究II : 第36回日本体力医学会大会
- 9066 動的筋トレーニングの強度設定ノモグラム(第二報)
- 26.筋力トレーニングの簡便な負荷強度の設定法について : 筋力トレーニング : 日本体力医学会創立30周年記念シンポジウム
- 5016 長距離選手のエネルギー使用の経済性(効率)について(5.キネシオロジー,I.一般研究)
- 5015 その場駆け足の機械的効率(5.キネシオロジー,I.一般研究)
- 運動処方の負荷設定法--ウエイトを用いたトレ-ニングにおける強度処方の簡便法
- 女子10, 000m走世界記録保持者のRunning techniques : '94アジア大会から
- 槍投げ動作の運動力学的分析
- 1297 荷重を用いた運動処方の負荷設定法
- 筋運動における負荷と反復回数間の法則性--トレ-ニング負荷の簡便な設定法
- 100m疾走の筋電図学的研究 : 6. キネシオロジー的研究
- 筋運動における代謝物質の変化とその副腎皮質ホルモンの関連性について : 運動生理学的研究
- 各種走行距離における酸素債の消長について : 運動生理学的研究
- 04生-3P-P07 長時間運動中の女性鍛錬者の基質代謝特性 : 運動強度と運動時間に着目して(04.運動生理学,一般研究発表抄録)
- 1064 歩行における遊脚側の骨盤前方回旋によって,step lengthを伸ばせるか?(理学療法基礎系,一般演題(ポスター発表演題),第43回日本理学療法学術大会)
- 歩行と走行の移動速度変化における骨盤と体幹回旋運動の相互相関分析
- 053V09 テニス・サービスにおけるラケット腕の関節運動(05.バイオメカニクス,一般研究発表)
- 11-26-K313-6 小学校6年生におけるハードル走の特徴 : 児童が選んだインターバルに着目して(11.体育科教育学,一般研究発表抄録,ひろしま発 ひとを育む体育・スポーツ)
- 07-26-K314-4 小・中学生の走運動における体力特性の発達と分化(07.発育発達,一般研究発表抄録,ひろしま発 ひとを育む体育・スポーツ)
- 05-28-西体-25 異なる刺激間隔での2回連続刺激における張力増強効果と筋収縮動態の関係(05.バイオメカニクス,一般研究発表抄録,ひろしま発 ひとを育む体育・スポーツ)
- 05-26-K204-6 高齢者と若年者の歩行の特徴 : 高齢者に対する歩行指導への提案(05.バイオメカニクス,一般研究発表抄録,ひろしま発 ひとを育む体育・スポーツ)