学級社会における「社会的共感性」の発達と変容 : 教育心理学におけるソシオメトリー発展の方向
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概要
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(1)ソシオメトリーは,今や,革命的ソシオメトリー(Revolutionary Sociometry)の時代に入ってきた。この新しい方向への試みとして「社会的共感性測定法」が提唱される。われわれが,この方法によって調査した結果では,児童生徒の学級集団における「社会的共感性」(Sodempathy)の発達は,相対的税逸度(v)によってみられるようである。すなわち,学年が進むにつれて,vは小さくさくなる。(2)社会的共感性測定の結果は,社会的共感性得点及びその順位によって示される。この順位をパーセソタイル・ランクに換算し,1年8ヵ月の間隔をおいての2回の測定結果を比較するに,社会測定的地位(Sociometric Status)は,学級の再編成により,叉,進級によって変容することがわかる。この変容には,個人差・性別グループ差及び学級差がある。(3)社会的共感性測定の結果は,「社会的共感図」(Sociempathic Diagram)によって図示される。このダイアグラムによってみると,社会的共感関係は,基準(Criteria)によって変容し,叉,進級によって変容することがわかる。(4)社会的共感図の吟味により,叉,社会心理学的理論から,社会的共感関係め理論的類型が得られる。この類型は,好感関係I-IX,無関係x,反感関係IX-XIXとして示される、この類型がどう現われるかを,規準の順に並べたものを,「社会的共感系列」(Sociemapthic Series)とよぶ。社会的共感系列の変容を検討することにより,各個人児童の行動の具体的法則が得られる。われわれは,以上の考察から,"「社会的共感性」(Sociempathy)は,知覚により,学習により,或は,経験によって,発達し変容する,従って,それは,指導により,叉は,治療により,改善し得るものである。"という仮定を,或程度まで,たしかめることが出来た。科学のゆくみちは遠い。われわれは,ソシオメトリック・リサーチを,さらに精密に正確にすすめて,社会的原子(Social atom)の微視的構造(microscopic structure)を明らかにすることにつとめ,他方,観察及び実験の操作を高度に科学化して,巨視的社会的行動(macroscopic social behavior)をより客観的にとらえんと試みる。これら両研究の結果の相互には,当然,ずれやみぞがあらわれるであろう。しかし,その点に,指導や治療のてがかりが発見されると考える。この方向が,教育心理学における,革命的ソシオメトリーの課題である。
- 日本教育心理学会の論文
- 1956-02-05
著者
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