少年の非行化傾向に関する研究 : 特に問題行動を中心として
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概要
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低年齢化現象という最近の非行傾向を解明するため,特に非行発生率の第1次ピークといわれる小学校5年生を対象として質問紙調査を行い,問題行動に影響を及ぼす環境的要因の多次元的把握を因子分析によって試みた。 その結果,学校不適応性,親子間の葛藤,父親による拘束の寛厳,刺激的遊びの4つの因子が抽出され,児童の問題行動を規定する要因の多次元性が指摘された。 次に,典型的問題児17名について,問題児-非問題児を識別する23項目,57カテゴリーへの反応パターンを,数量化理論第III類によって分析し,問題児の分類を試みた。その結果,問題児は5つの群に分類され,それらが非行性の進度を表わすことが示唆された。 本研究では問題児を行動連続体上の極に定位し,対象群としての非問題児を反対の極にある児童としたが,このことについて若干の問題点は残る。つまり,対象群をいわゆる普通児とするならば,平均的な児童を対象群とすべきであったかもしれない。問題行動性が平均以上に低い児童は別の意味で問題性を備えた児童であるかもしれないという疑問は残る。 さらに,本研究では当初は男女差も問題にする予定であったが,女子の問題児が極めて少なかったので今回は割愛した。今後の課題としてこのことに若干触れておくべきであろう。まず,女子の問題児を十分抽出できなかったことは,元来女子の非行が少ないという事実から当然かもしれぬが,行動観察記録票の項目が男子の問題児を対象として作成されていることも一因であろう。この観点から,本論では問題行動因子得点の下限を修正して女子の問題児を多く得る方法はとらなかった。さらには,従来少年非行一般を論ずる場合には男子中心の統計をもとにしてなされることが多く,質問項目も男子の問題児を識別しようとの意図で作成されることが多い。以上のことから,女子の問題行動を体系的に整理することが今後必要であろう。 本研究は小学校高学年の児童を対象としたが,現在,非行発生率の第2次ピークにあたる中学2年生を同じ方法で分析中であり,問題行動の横断的発達研究を準備中である。
- 日本教育心理学会の論文
- 1978-12-30
著者
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