自己強化の機能に関する実験的研究
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概要
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本研究の目的は,正反応が客観的に決定されている事態における自己強化の強化機能を明らかにすることであり,そのために実験I及びIIを実施した。 実験Iにおいては,無意味綴りの再認弁別課題を用いて,予め正反応が外的(客観的)に決定されている事態での自己強化の強化効果について,検討を試みた。被験者は小学校6年生(約80名)。課題は,記憶刺激を1回のみ提示し,その後再認弁別刺激を提示して再認させるというものである。この再認弁別刺激は15項目(記憶刺激を5項目含む)で,これを1試行とし,くり返し6試行行う。その際,課題の困難度を,記憶刺激数によって,3水準(5, 10, 15項目)に変化させた。 条件群は,再認弁別刺激の各項目に反応後a)そのつど,自分の反応が正答であると思ったら,自分で○印を解答用紙に記入する群(正の自己強化SR_+群),b)そのつど,自分の反応が誤答であると思ったら,自分で×印を解答用紙に記入する群(負の自己強化SR_-群),c)上記のa),b)を合わせて行う群(正・負の自己強化SR_<+->群)の3群を設定し,さらに統制群として,単に反応のみを行う群を加え,計4群の比較を行った。 その結果は以下のとおりである。 1) 正の自己強化を含む群(a),c)群)において,正の自己強化を伴なう反応は,次の試行においても同一反応となる割合が高く,"同一反応の出現頻度を高める"強化効果がみられた。 2) 負の自己強化を含む群(b),c)群)においては,負の自己強化を伴なう反応が,次の試行で変更される割合は低く,"反応を抑制し変更させる"効果はみられなかった。 3) 統制群においても,同一反応が出現する割合は比較的高かったが,課題が困難になるにつれて,その割合は減少する傾向がみられた。 実験IIにおいては,実験Iで扱った自己強化の機能について,さらに詳細な検討を試みた。また,自己強化をovertに行わせることの有効性についても,合わせて検討を加えた。ここではさらに,自己強化をよりovertに行わせるだけではなく,その誘因水準を高めた場合の強化効果をも検討することとした。なお,繁雑さを避けるために,正の自己強化のみを扱った。 被験者は小学校6年生(60名)。課題は実験Iと同種の再認弁別課題を用い,実験Iよりやや困難なものとした。記憶刺激15項目,再認弁別刺激10項目(うち記憶刺激3項目),10試行の同一の再認弁別課題を行う。提示方法,手続は実験Iと同様である。 条件群は,再認弁別刺激の各項目に反応後a)そのつど,自分の反応が正答であると思ったら,ボタンを押してライトをつけ,さらにチップを1枚取る(自己強化・誘因水準高SR_<++>群),b)そのつど,自分の反応が正答であると思ったら,ボタンを押してライトをつける群(自己強化・誘因水準低SR_+群),さらに,c)上記の自己強化の操作のない統制群,の3群である。 主な結果は以下のようである。 1) 自己強化群(a),b)群)では,実験Iと同様に,"同一反応の出現頻度を高める"強化効果がみられた。 2) 自己強化刺激数(誘因水準)による自己強化の強化効果には差はみられなかった。 3) 統制群との比較において,自己強化をovertに行わせることの有効性が認められた。
- 日本教育心理学会の論文
- 1978-09-30
著者
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