適応の指標としての自己概念の研究
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概要
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現実自己と理想自己の差(D_<PI>)だけでなく,現実自己,他者白已(友人,母,父から見られていると思う自己)との差(D_<PF>,D_<PM>,D_<PFa>)も考慮すべきであるとの観点から,2つの研究を行ない,適応の指標としての有効性,各差異点の関連する適応領域について検討した。なお自己概念の測定には長島貞夫らにより開発された自己記述(Self-Differential)尺度を用いた。最初は大学生を対象として,YG性格検査得点に関して,差異点の大小群の比較をした。4つとも情緒性の指標となり,加えてD_<PF>,D_<PM>,D_<PFa>は社会的適応の指標となった。なかでもD_<PF>は最も多くの適応領域と有意味な関係があつた。次には,精神分裂病者群と大学生群の比較を行ない,D_<PF>,D_<PFa>が両群を敏感に弁別することを見出した。とくにD_<PI>は因子の5つにおいて弁別した。しかし,これは従来の結果と矛盾しているが,その正確な説明は保留された。この比較ではD_<PF>,D_<PM>はあまり有効ではなかった。第1因子(意欲性,強じん性),第IV因子(敏感性)は両群の弁別により有効である。以上の結果から,正常者内の比較の場合と正常者と精神分裂病者問の比較の場合では適応の指標としての有効性が異なるが,いずれにしても,D_<PI>のみでなく他者,自己とのずれを併用することは,広い適応領域にわたる有効な予測を可能にすることが結論された。今後の問題についても若干触れた。
- 日本教育心理学会の論文
- 1966-09-30
著者
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