重度精神薄弱児の社会的適応 : 自由行動場面の観察から
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概要
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1)重度精薄児の寮集団および指導グループ編成と指導上の手がりを得るために,自由時間におけるかれらの社会的交渉を観察した。被験者は32名で,24名は同一寮舎(H)に8名は他の寮舎に生活していた。24名の中13名はAグループに,5名はBグループに,残り6名はCグループに属した。観察は1日20分間,6日間にわたって計120分間行なった。また,職員との交渉も観察した。寮生活場面については第2回目観察を約5か月後行なった。2)能力が多様な共同生活場面(H)において,能力段階によって社会的交渉の量,質は異なっている。すなわち,CA13,4才,IQ40前後のものでは児童相互の望ましい交渉が多くみられ,また低い者への介助的交渉も多くみられる。白痴級,重度痴愚級のものには積極的な交渉はほとんどみられず,無為,常同的行動,ひとり遊び,フラフラ歩きなどが多く,また被介助的被侵害的交渉を多くもつ。職員との交渉も少ない。3)H場面内には3,4名からなる中心的下位グループが1つあり,そのグループ内の相互の交渉はいくらか密であるが,他はほとんどバラバラの存在である。4)Aグループ(重度児)の生活指導グループ場面では,バラバラではあるが,被侵害的交渉はきわめて少なくなり,各児童がそれぞれ自分の場を得て安定したようすでふるまう。各児童がそれぞれに職員との接触も多くもてる。しかし,Aグループ内のやや高い児童は浮き上がった存在になり,かれらの交渉はH場面より低下する。(5)Bグループ(CA11,2才,IQ約35)はAグループより積極的な交渉が多くみられる。ソシオメトリックテストにおける相手の選択は不安定で信頼に欠ける。また,テスト結果と実際の交渉相手は一致しない。6)H場面についての第2回目観察において,特に低年令で比較的能力の高いものの対人的交渉の度合いが目立ってきた。そのひとつの要因として,その期間の指導方針,態度が推定される。7)職員との交渉でも低いものと高いものでは,その量・質が異なっていた。高い群は,能率的な交渉,肯定的交渉が多いが,低い群は受動的であり,否定的,禁止的交渉が目立っていた。また低い群では,生理的・基本的生活の要求の次元での交渉が多かった。8)結局,重度児は,能力の「高い」者「低い」者の混合集団生活において,なかまからも職員からも拒否的交渉を多く受けていることがわかった。重度児のなかの神経症的傾向のひとつの原因が推察された。重度児の対人関係,職員の接し方の配慮や研究の必要が感じられた。
- 日本教育心理学会の論文
- 1966-09-30
著者
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