情報化社会における合理的無知 : デジタルデバイド意識の集団差は存在するか
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
情報化の進展によって人びとが懸念することの1つにデジタルデバイドの問題があるが, 本稿ではデジタルデバイドへの懸念が日本社会において集団間で差があるかどうかを検証する。性別や年齢といった人口学的集団で差がみられるのか。あるいは階層集団によって差があるのか。あるいは情報機器(PC, 携帯電話)の使用の有無で差があるのか。これらの議論の根拠となるのは, 橋元(2001)の提示した「合理的無知」という概念であり, それによれば人びとは情報機器を使用しないことをあえて選択することが少なくない。つまり, デジタルデバイドの懸念を感じるような社会的認識に, 日本社会は至っていないと解釈できる。情報化の進展は目まぐるしいが, はたして橋元の調査以降もこのような状況が続いているのかどうか, 2001年と2003年に収集された全国対象のパネルデータを用いて検証する。また, 2時点での変化も考慮し, 使用機器の開始や中止, あるいは地位移動がデジタルデバイドへの懸念に影響を与えたかどうかをも検証する。さらに, デジタルデバイドへの懸念を2時点間で増加させた層がいるとしたら, それはどのような人びとなのかも分析する。結論として, 集団間でデジタルデバイドへの懸念があまり存在しないということが, 分析結果からいえる。2時点の変化を考慮しても同様の結果だった。それが意味することは何なのか, 日本社会の情報化の特質をふくめ詳しく検討する。
- 2004-09-30
著者
関連論文
- IT技術と地域デモクラシーの活性化--「ICTの社会化」の推進を (特集 電子政府・自治体のゆくえ)
- 要介護高齢者へのケアカンファレンスの実践とソーシャルキャピタル--「尾道方式」にみる地域連携のあり方
- ソーシャル・キャピタル概念を用いたコミュニティ成員や地域住民の健康に関する研究可能性
- 韓国の敬老堂におけるソーシャルキャピタルと健康
- 認知症高齢者に対する在宅医療をおこなう医師の特質--患者やその家族との関係性やソーシャル・キャピタルに注目して
- 選挙時における情報行動の日韓比較 : 日本参議院議員選挙と韓国大統領選挙におけるメディア利用と投票行動の関連
- 新聞記事にみるインターネット・イメージの日韓中比較
- ネット利用とオンライン・コミュニティの日韓比較
- パネル調査によるインターネット利用の影響分析
- 児童養護施設児童と世代間交流--高齢者との交流に関する提案
- 福祉を志向する若者とその経験値および家庭環境--質問紙調査結果からみる大学生の学科選択要因
- 児童養護施設退所者の生活実態と主観的意識--大学生との比較調査を通して
- 不妊の対応策としての養子縁組・里親制度の可能性--斡旋事業および人びとの意識をめぐる検討
- 親の社会的属性と親向け教室への参加--家庭教育等への参加者・非参加者データ分析による政策的示唆
- 家族コミュニケーションと情報機器--小中学生とその親における携帯電話の使用状況
- パネル調査によるインターネット利用の影響分析
- 家庭教育や親向け講座への参加に関する調査データ分析--福祉教育施策は親たちに届いているか?
- 日本の高齢者--介護予防に向けた社会疫学的大規模調査(8)高齢者の健康とソーシャルサポート--受領サポートと提供サポート
- 児童養護施設の入居児童へのセミナーに関するプログラム評価--NPO法人ブリッジ・フォー・スマイルにおけるロールモデルとしての社会人ボランティア
- 茂木健一郎と愉しむ科学のクオリア(31)日本のネット文化を変えるには
- 特集討論 「エスノグラフィーの素朴」から方法論の深化へ (特集 「エスノグラフィーの素朴」から方法論の深化へ)
- インターネット利用行動と一般的信頼・不確実性回避との関係
- 「環境としての情報空間」
- 日本と韓国の地域高齢者における比較研究 (特集 日韓地域福祉の比較研究) -- (特集 地域福祉と介護予防の日韓比較)
- 韓国における高齢者向け地域福祉施策--「敬老堂」からの示唆
- 大学生初期利用者に見るSNS (Social Networking Service)と対人信頼感
- ブロードバンド社会のE-quality : アクセスの平等化
- Humidity Sensitive Electrical Conduction of Polycrystalline Boron Nitride Films
- Cyberspace as Socio-psychological Space : Cross-Cultural Comparison among the Japanese, Koreans and Finns
- Socio-Cultural Differences in the Use of Personal Web Homepage and Electronic Communities among Japanese, Finnish, and Korean Youth
- 地域在住高齢者における社会的サポートと抑うつの関連--AGESプロジェクト
- 「ペアレンティング」講座の行政的実践とプログラム評価--家庭教育事業の全国調査結果をふまえて
- 個人ホームページ所有と電子コミュニティの社会文化的差異 : 日本・韓国・フィンランド比較分析
- 情報化社会における合理的無知 : デジタルデバイド意識の集団差は存在するか
- 児童養護施設退所者へのアフターケアの実践--全国施設長調査の結果をめぐる考察
- Are Japanese youth healthy?: a Japanese and Finnish student survey
- 在宅医療における医師の意識と実践--認知症高齢者への対応に関する調査結果より
- 高齢者の社会参加と電子コミュニティ--NPO法人の実践例からの福祉施策的示唆
- Social participation and organizational factors: causality and a cross-lagged regression model
- 高齢者の親子コミュニケーションと情報機器
- ヴァーチュアル・エスノグラフィー--文化人類学の方法論的基礎の再構築に向けて (特集 「エスノグラフィーの素朴」から方法論の深化へ)
- フォーラム ネット社会のガバナンス(第1回)ネット社会でせめぎあう3つの原理
- 「病気になる」ことの認知人類学
- 「間メディア性」本格化の年 (特集 2005年--わたしたちはどこへ向かっているのか、どこまできたのか)
- デジタルデバイドと日本社会
- デジタルインクルージョンを政策課題に(2)ITが持つ"社会増強力"の活用を--「縮小しながら成長」しなければならない日本
- デジタルインクルージョンを政策課題に(1)米国・欧州型モデルに見る情報化社会の経済成長戦略
- デジタルデバイドと日本社会 (特集 情報空間の多様化と生活文化)
- ネットワーク・リアリティ--ポスト高度消費社会としての情報ネットワーク社会を構想する (特集 「情報化」はくらしと社会を変えられるか--知識社会実現の戦略)
- 高齢者による情報コミュニケーション機器の利用実態 : 情報行動論からみた政策的示唆
- 日本の「ペアレンティング」講座--子どもを持つ親に対する行政の取組み (「家庭教育研究奨励金」研究報告)
- 韓国高齢者の地域参加と健康増進 (特集 住み慣れた地域で安心・安全に生活していけるための高齢者支援)
- 実践・研究のひろば 児童養護施設退所者の生活実態と自尊感情--大学生との比較調査をとおして
- 家庭環境の学業成績への影響--男女差は存在するか?