日常生活の中の呪術 : 文化人類学における呪術研究の課題(<特集>呪術再考)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
文化人類学で用いられる呪術概念は, 近代ヨーロッパの形成過程において, 宗教(キリスト教)や科学や近代的な社会制度から排除され否定的な価値を付与された残余カテゴリーであった。この残余カテゴリーの指し示すところにしたがって始められた呪術研究においては, 連想の原理の誤用, 心理的言語技術, 融即, 象徴的表現, 物語生成装置, 構成規則にしたがう技術, ゼロ記号などさまざまなとらえ方が提出された。その過程で, 非合理的でマイナーな慣習と見なされていたものの研究が, 文化的存在としての人間生を根底で支えているものでありながら近代的な諸科学が気づかなかった行為の諸側面や, 文化的秩序の基本的な再生産装置に光を当てるという逆説的な事態が生じている。しかもそのような行為の諸側面や文化装置の弱体化は, 現代文明が草の根において遭遇しつつある危機とかかわりをもっていると思われる。このような観点から呪術研究をさらに展開するために必要なことの一つは, 日常的文脈における呪術世界の研究を基盤として, レヴィ=ストロースのマナ論にみられるような理論的考察と民族誌学的な記述分析と内在的記述とを結び付ける作業である。
- 日本文化人類学会の論文
- 1997-12-30
著者
関連論文
- 東アジアにおける日本の武道文化の成立と展開
- 東アジアにおける武術の交流と展開
- 東アジアにおける武術の交流と展開
- 東アジアにおける武術の交流と展開
- 報告4.「後背地」から : アフリカの妖術(文化人類学から宗教を見る-オカルト的想像力と近代-,テーマセッション4,2004年度学術大会・テーマセッション記録)
- 日常生活の中の呪術 : 文化人類学における呪術研究の課題(呪術再考)
- 川田順造・徳丸吉彦編, 『口頭伝承の比較研究 (1)』, 弘文堂, 昭和 59 年, 359 頁, 4,800 円(イスラーム)
- III 討論要旨(病いのシンボリズム)
- 序(病いのシンボリズム)
- 宮田登著, 『原初的思考・白のフォークロア』, 東京:大和書房, 1974, 261pp., 1,300円
- アンリ・ロート, 永戸多喜雄訳, 『タッシリの遺跡』, 東京, 毎日新聞社, 1960, 241p., 320 円, H. LHOTE, A la decouverte des fresques du Tassili Paris, Arthaud, 1958