イネにおける浮稲性の遺伝
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概要
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浮稲性の遺伝様式を知る目的で,数段階の浮稲性程度にわたる10品種間の相互交雑を行い,F_1,F_2個体の浮稲性を,タイ国アユタヤ県ハソトラ深水稲試験場の深さ150〜170cmの池における検定によって調査した。浮稲と非浮稲の交雑のF_1個体は,ぽぽ両親の中間程度の浮稲性を示したので(第1表),浮稲性は部分優性の形質であると考えられる。浮稲性をポリジーン形質と仮定して,F_1のダイアレル表の分散分析を行うと,相加的効果が他の効果より圧倒的に大きい(第2表)。結果を示したF_2集団のうち,多くは単頂の連続的な分布を示し,多数の遺伝子の関与が推測された。半壊性遺伝子を持つと思われる,T442,RD1とバングラデシュの品種DW8の交雑による2集団では二頂曲線またはそれに近い分布が見られた(第3表)。F_1実験においては,発芽期の雨と増水期のカニの食害によって,現品種の環境変異がかなり大きくなり,精度の点で再検討を要するが,F_1実験では現品種内の個体問変異は小さかった(第4表)。部分優性の多数個の遺伝子が浮稲性に関与するとすれば,(1)浮稲性に関する選抜は初期世代から開始してもよく,また(2)種々の程度の浮稲性程度を備える品種を育成することができると考えられる。なお広義の深水抵抗性は,浮稲性,狭義の深水低抗性(却ち50〜100cm程度の深水に対する低抗性),冠水低抗性,その他,海岸湿地の深水地帯の稲に要される塩水抵抗性などの諸局面を含むと考えられるが,浮稲性以外はほとんど遺伝的解析がなされていない。
- 日本育種学会の論文
- 1979-09-01
著者
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