パイナップルの組織培養による再分化固体にみられる変異〔英文〕
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概要
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パイナップルの品種スムースカイエンの組織培養を行ない,幼小果実・えい芽・冠芽・吸芽とえい芽の腋芽から約800の植物体を誘導した。このうち,448個体が土壌に移植後も生育を続けている。本報告は,組織培養技術をパイナップルのような自家不和合性の栄養繁殖作物における大量増殖と変異体の作出法として適用することを目的として,これらの分化植物体にみられる変異の種類と出現の状況をまとめたものである。観察された形態的変異の主なものは以下の4形質に関するものであった。(1)とげ:正常型は葉の先端に極く少数のとげを出現するのに対し,葉の全縁にとげを出現するもの,稀に片縁のみにとげを出現するものが得られた。(2)葉色:正常型の葉色を濃緑色とすると,緑色あるいは黄緑色の変異体が得られた。(3)ろう質:正常型の葉の背軸側の裏面は白い粉状のろう質によって覆われているのに対し,ろう質の分泌が少ない変異体が得られた。(4)葉の密生程度:正常型の葉数の約1.5倍から2倍の葉数をもつ変異体が得られた。このほか,葉の巾が正常の,1/2程度の細葉型や葉に白色のしまの入るものがいくつか得られた。これらの変異の出現頻度と出現の型は培養に用いた器官の種類によって異なっていた。すなわち,果実とえい芽は高頻度で変異体を生じたが,冠芽と腋芽は正常型を多く生じ,変異体の出現は低頻度であった。また,果実より生じた変異体は,葉色・とげ・ろう質・葉の密生程度の4形質に関する変異を示したが,えい芽・冠芽・腋芽より生じた変異体の大多数はとげに関するものであった。これらの変異が多数生じた原因として,培養によって生じた場合と培養材料がキメラであった場合などが考えられた。結論として,組織培養技術をパイナップルの大量増殖と変異体の作出という二つの相反する目的に利用するためには,各々の目的に適した器官を培養することが必要と考えられる。
- 日本育種学会の論文
- 1979-03-01
著者
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