エチレンイミンの累代処理により誘起されたイネの籾型変異について
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概要
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chemical mutagen処理による突然変異の誘起効果に関する研究の一環としてエチレンイミン(EI)を毎代繰り返し処理し,後代に分離してくるイネの籾型突然変異について検討した。供試材料凱旋儒(E39)のEI処理後2週間目の生存率を調べたところ,LD_5_0は0.8〜1.0%と推察され,比較的EI感受性の低い品種であると考えられた。籾長と籾幅の頻度分布のパターンは対照区の理論頻度分布と比較的よく一致していたが平均値のプラスまたはマイナス方向への移動が認められた。両形質の分散には頻度分布図から推察されたように対照区に比べて有意な増大がみられなかったのに対して,平均値にはほとんどの処理区で有意差が認められた。1974年と1975年の対照区の平均値の差を年次間差とみなし,世代間の正味(net)の差を求めたところ,籾長,籾幅とも世代を経るに従って減少してゆく傾向を示した。ほとんどの処理区で両形質問に高い正の相関がみられたことから,処理集団の籾型は小粒化の傾向があると推察された。しかしながら,相関図において変異限界から籾長,籾幅ともプラス方向へ変異した大粒型や,籾長はマイナス,籾幅はプラス方向へ変異した丸粒型の変異体汰とが認められたことは,両形質ともブラスもしくはマイナス方向へ独立に選抜できる可能性を示唆しているものと考えられた。1回処理区より2回あるいは3回処理区の方が高い変異限界外個体出現率を示したことから,累代処理法は供試材料E39の籾型に関する限り,変異の累稜効果とかなり高い突然変異誘起効果が期待できるものと考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1978-09-01