モルファクチン処理によるパイナップルの花芽からの栄養芽の誘発
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概要
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パイナップルは自家不和合性植物であり,増殖は果実頂部に発生する冠芽(1本),果実首部に発生する裔芽(2〜3本),主茎上に発生する吸芽(1〜2本)および塊茎芽(0〜2本)を利用しているが,増殖率が低く栽培,育種上問題である。本報ではパイナップルの急速増殖を目的として,花芽のモルファクチン処理による栄養芽誇発効果を検討した。供試品種は裔芽発生の少ないタイ国系優良系統であり,モルフアクチンは植物の形態形成に強い調節的作用で知られている。処理はまず材料が花芽分化の直前の状態に達した時期に,エスレル500ppm水溶液を個体あたり20ccずつ2日連続して茎頂部に冠注し,花芽の同調分化を強制したのち,4時期の花芽発達段階に80および100ppmのモルファクチン水溶液を茎頂部に冠注処理した。その結果,処理した花芽から発達した果実上に,自然には発生しない栄養芽が多数発生した。この栄養芽は,1個の小果上に2次的に数個の異常小果が形成され,これが集合して小形の果実様体となり,その頂部に発生した。ここではこの栄養芽を便宜上果実芽(buds-from-fruit)とよぶ。いずれのモルフアクチン濃度区においても,エスレル前処理後6〜12日目の発達段階の花芽に対するモルファクチン処理が高い果実芽誘導効果を示し,処理個体の80%以上が果実芽を着生した。1果あたり平均果実芽数は6.5〜15.7で最高教は32であった。モルフアクチン処理によって果実芽を誘発した小果の果実上の位置は処理時の花芽分化段階と平行して移動し,モルファクチンが作用する花芽の適発達段階の存在を示唆した。この適発達段階は解剖顕微鏡下で認められる花芽原基分化期以前にあると推定された。モルフアクチンは,果実芽誘導効果の他に,裔芽および吸芽の増発効果,花芽の抽出遅延および巻葉化作用も示した。以上,モルフアクチンによりパイナップルの果実上に栄養芽を誘発することを明らかにしたが,増殖技術の実用化のためにはなお検討すべき点が残されている。
- 日本育種学会の論文
- 1981-09-01
著者
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