コスモスの育種学的研究 : V. 花型遺伝子の形態的発現 (1) 一重型,舌状花奇形型,副花弁型の発現について
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概要
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この実験においては,舌状花発現の遺伝子について遺伝子型を異にする花型が形態発生的に如何なる時期から明か汰差異を示すようになるかを観察し,それによって各遺伝子の働きによる形質発現の時期を形態的の変化を通しておよそ推定しようと試みた。材料は一重型(S型),舌状花奇形型(Np型,Vt型.Mt型),副花弁型(Ms型)を用いた。一株から発育段階の異なる蕾を多数採集固定して,同程度の発育段階の蕾について各花型間で形態発生の様子を比較した。一重型の頭状花の形態的発生は次のように進行する。短日処理約一週間で生長点は膨大を始め生長円錐体を砂成する。つづいて円錐体基部から症状の小花の原基を生じ漸次に頂点に及ぶ。心花の周縁は伸長を促進して盃状体を形成し,その後の発生に於て舌状花と管状花の間の区別が始まる。管状花では盃状体の縁辺部に5つの生長点を生じ,放射相称的の伸長により筒状小花を形成するが,舌状花では,盃状体の外面の3花冠片のみが下方の生長帯と共に伸長し,内面2花冠片は伸長を抑圧されて左右相称的の発達を示す・舌状花奇形型群(ss遺伝子型)では管状花の発達てば一重型と何等の差を示さないが,舌状花は初期生育に於ては管状花の発達に類似し,5花冠片を平等に伸長する放射相称的の発達の傾向を示す。花芽の発達が進んで開花近くなって,内面2花冠片は次第に伸長を抑圧されて外面3花冠片の発達との間に差異を生ずるようになり,その差異の程度により,舌状花筒状型,舌状花痕跡型,無弁型の区別を生ずるようになる。無弁型と一重型のF_1の副花弁型では,管状花の発達は一重型同様に進むが,舌状花の発達初期には一重型と同様の形態を示しているが,やや後期に及んで内面2花冠片の伸長抑制が破れて,開花時には2枚の副花弁を有する特有の副花弁型花型を形成するに至る。以上の実験結果からS-s遺伝子の機能発現は盃状体形成の直後から起り,舌状花弁を左右相称的に発達さ昔るか叉は放射相称的に発達させるかの分化を決定するmajor geneであり,M^S遺伝子の機能はその後に発現されてss伝子型に於て舌状花弁の分化伸長に影響するminor gene的の働きを持つものであろうと推論された。
- 日本育種学会の論文
- 1962-03-25
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