コスモスの育種学的研究 : III. 温度の相異による花型の転換について
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概要
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遺伝子型の判明している15系統を用いて,花型遺伝子の発現に対する温度の影響を見た。温度は東大構内のバイオトロン内で30℃,20℃,10℃及び戸外の自然温度下で比較した。各温度区には挿木により繁殖した同一栄養系を供試した。開花期に同一栄養系内で花型の表現を比較した。結果は次の通りになつた。(1)一般に高温は花弁の発達を阻害し,低温は促進する傾向が見られた。(2)一重型,無弁型,優良八重型では著しい花型変化は見られなかつた(第3図,第4図)。(3)舌状花奇形型では,高温では舌状花の発達が著しく抑制されて,無弁型に移行し,低温では舌状花は戸外に於けるより遙かに大きく伸長した。然し舌状花の奇形性は除去されなかつた(第5図)。(4)不完全八重型では筒状花の発達は温度により著しく影響をうけ,高温では筒状花の発達は殆んど完全に抑えられて,一重型に殆んど近い表現を示したのに,低温では極めて優良な八重型となつた。又低温では全く花粉を出さないものが,高温では一重同様多量の花粉を出した(第6図,第7図)。以上の結果について次のような考察を試みた。温度の影響で著しい表現型転換が見られたのは,花弁発現に作用すると考えられる生長物質が,異なった温度条件下でその発言力を変更された遺伝子のために,その生成,分配等に差を来たした事に基因すると考えられ,環境の影響をうけ易い変更遺伝子の関与する範囲内で影響が現れたものと思われる。
- 日本育種学会の論文
- 1959-09-30
著者
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