大分県飯田高原の火山灰土傾斜畑における土壌浸食防止策の検討
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概要
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大分県飯田高原の標高880m, 傾斜約5〜7°の厚層多腐植質黒ボク土の傾斜野草地を原地形のまま開畑して斜面長20mの圃場を設け, 慣行的なキャベツ栽培条件 (キャベツ単作, 上下作畦高畦) に対する作畦方法, 作村様式等の土壌侵食防止対策を検討し, つぎの結果を得た. 1. キャベツ栽培期間の6〜9月の降水量に対する表面流去率は上下作畦高畦に比べて等高線作畦高畦では著しく減少し, 上下方向平畦, 牧草帯導入によっても少なくなった. フィルムマルチ栽培では逆に増加した. 梅雨期の大雨の際には, 各処理とも表面流去率が著しく増大した. 2. 上下作畦高畦の標準区では, 1982〜1985年のキャベツ栽培期間に乾土1996kg/aの土壌が流出した. 等高線作畦高畦にするとその21%の流出土量で顕著な侵食防止効果を示した. また, 上下方向平畦でも流出土量が減少した. 3. 裏作のライムギの刈株すき込みにより, 上下作畦高畦のキャベツ栽培の流出土量は, 裏作をしない標準区に比べて79%に減少した. ライムギを高刈りにしてすき込み量を多くすると, さらに侵食防止効果が大きく60%に減少した. 4. 堆肥増施による侵食防止効果は, 裏作ライムギの高刈り刈株すき込み処理に劣った. 5. フィルムマルチ栽培 (上下作畦高畦) では, 表面流去率が著しく増加し, 畦間の土壌が流出した. 流出土量 (乾土kg/a) は, 1982年270, 1983年382, 1984年425, 1985年938で, 野草地開畑後の年次の経過とともに増加する傾向を示した. 6. 上下作畦高畦の下部に幅2mの牧草帯を導入した結果, 土止め効果があり, 流出土は牧草帯上方の畦間と牧草帯のなかで堆積した. 7. 本試験のキャベツ栽培において, 土壌の流出に伴い失われる施肥成分量を求めた結果, 施肥成分の損失量は流出土量の多少に支配された. 以上から, 当地域のキャベツを中心とする野菜畑の土壌侵食防止対策としては, 裏作にライムギを栽培し, 刈株すき込みによる残渣の還元を導入する方法が効果的である. また, 等高線畦栽培が可能な畑地 (傾斜約9°以下) では, 等高線畦を積極的に採用することにより, 土壌侵食を大幅に軽減できると考えられる. なお, 新たに野草地を開畑する場合は, 未耕起部分をベルト状に残して, 牧草地と農道の兼用とし, 畑地の区画の縮小, 斜面長の短縮を図るとともに, 上位斜面からの表面流去水の排除等に十分な配慮を払う必要があろう.
- 1987-08-05
著者
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