水稲のカドミウム吸収に対する多量栄養カチオンの相助作用

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水稲種子根でみられた培地中多量栄養カチオンによるCd吸収の抑制作用が、生長した水稲にまで一貫して現われるかどうかを検討することを目的に、培地中のK:Ca:Mgの当量濃度比を1:1:1として、カチオン濃度を2×10^<-4>,2×10^<-3.75>, 2×10^<-3.5> eq/l, Cd濃度を0, 0.03, 0.3 ppmのそれぞれ3水準ずつ組み合わせた水耕栽培実験を行い、以下の結果と考察を得た。1)分げつ期から穂揃い期の間に、各Cd添加列系における生育量はCd-0系列と同様に著しく増加し、Cdおよびカチオンの個体当たりの取込み量も同様にきわめて大きく増加した。この間に、含有率と取込み量でみたCd吸収に及ぼす培地カチオン濃度の影響は、種子根で示された拮抗作用から相助作用へと逆転した。すなわち、カチオン濃度の影響は生育期間を通して一貫性を示さなかった。2)生育後期には、全体的にみると培地カチオン濃度の増大によるカチオン取込み量の増加に伴ってCd取込み量は増加したが、培地カチオン濃度が増大してもそれに見合うカチオン取込み量の増分も示されなかった。また、生育後期の根と茎葉におけるCd含有率とカチオン含有率間には高い正の相関が示され、とくに茎葉でのCd含有率と2価カチオン含有率との相関が高かった。これらのことから、Cdとカチオンの移行には高い並行性が認められる。これに反して、蒸散量の増減とCd取込み量の増減との間には並行関係が認められなかった。3) 2)から、水稲におけるCd移行はマスフローでなく交換吸着に基づくと判断した。4)生育後期における培地カチオンによるCd吸収への相助作用は、導管中でのCd移行に対するカチオンの促進作用が個体全体のCd吸収への支配的要因となる結果であると推論した。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1991-06-05

水稲のカドミウム吸収に対する多量栄養カチオンの相助作用

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