きゅう肥連用土壌の粒径画分および団粒サイズ画分の有機物とその無機化
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概要
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0〜20 kg m^<-2>のきゅう肥を4年間にわたって連用した黒ボク土畑地表層から採取した土壌を、粒径および団粒サイズに基づいて分画し、得られた画分の全炭素含有量と全窒素含有量を測定するとともに、インキュベーション実験によって炭素と窒素の無機化を検討した。1)きゅう肥の連用に伴って、全炭素と全窒素の含有率は未分画土壌およびすべての粒径画分で増加する傾向にあったが、有機物の相対的増加は粗砂画分で最も大きく、ついで細砂画分で大きかった。また、きゅう肥の連用は、団粒サイズ画分のうちでも0.25 mmより大きな部分の割合を増加させた。さらに、きゅう肥連用に伴う団粒サイズ画分の全炭素と全窒素の含有量の増加は全画分で認められたが、有機物の相対的増加は0.5〜2 mmの画分でもっとも著しかった。こうしたことから、きゅう肥の連用によって土壌中に集積する有機物は主に砂サイズの粗大な状態であり、きゅう肥由来の粗粒な有機物の多くが団粒を構成して存在していると推論された。しかし、各団粒サイズ画分の粒子組成から、砂サイズの粗粒有機物の一部には団粒を形成していないものもあることが示された。2)粒径画分および団粒サイズ画分からの炭素と窒素の無機化量は、きゅう肥の施用量が増えるにしたがって、すべての画分で増加する傾向を示した。きゅう肥連用に伴う粒径画分への易分解性有機物の集積は、粗砂画分においてもっとも著しかったが、きゅう肥施用量がもっとも多いM 20区においてさえも、無機化窒素の供給には粗砂画分より粘土画分がもっとも大きな役割を果していた。団粒サイズ画分への易分解性有機物の集積も、0.25 mm 以上の粗大な画分で著しく、そのうちでも、炭素の無機化には0.5 mm 以上の画分が大きな役割を果していたのに対して、窒素では0.25〜1 mm の画分の役割が大きかった。さらに各画分から無機化した炭素と窒素の比を計算したところ、粒径画分、団粒サイズ画分いずれにおいても画分サイズが小さくなるほど低下した。以上のことから、きゅう肥連用土壌における易分解性有機物の供源は、主として粗大な団粒を形成して集積している粗粒有機物と粘土画分に集積した有機物であると推定された。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1992-10-05
著者
-
青山 正和
弘前大学農学部
-
青山 正和
弘前大・農学生命科学部
-
谷内 豊
弘前大学農学部
-
青山 正和
弘前大学農生部
-
谷内 豊
弘前大学農学部:(現)青森県三戸保健所
-
青山 正和
弘前大学農学生命科学部生物資源学科
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