有機栽培期間の異なる野菜畑土壌の理化学性
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概要
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畑地における有機栽培が土壌の化学性,養分状態ならびに団粒組成に及ぼす影響を検討することを目的として,有機栽培の継続期間の異なる野菜畑土壌について,化学性,可給態養分ならびに団粒組成の分析を行った.土壌は,ワタミファーム山武農場(千葉県山武市,標高約35mの台地上,黒ボク土),倉渕農場(群馬県高崎市,標高約500mの山間地,黒ボク土)および白浜農場(千葉県南房総市,標高約40mの海岸段丘上,グライ土)の14圃場から表層を採取した.有機栽培の継続期間が長くなるほど土壌pHは上昇し,山武農場の6年以上継続した土壌および白浜農場で有機栽培を5年間継続したハウス土壌ではpH(H_2O)が7を超えていた.また,有機栽培による交換性陽イオンの集積が認められ,有機栽培による土壌pHの上昇は交換性陽イオンの集積によるものと判断された.倉渕農場と白浜農場では,有機栽培によって土壌の全炭素量と全窒素量が増加する傾向が認められたが,山武農場では増加の傾向は認められなかった.ECも有機栽培によって上昇し,とりわけ有機物施用量が多い土壌での上昇が大きかったが,最大でも0.16 dSm^<-1>であり,作物の生育に悪影響を及ぼすほどではないと考えられた.水溶性陽イオン量(Ca^<2+>,Mg^<2+>,K^+とNa^+の合量)はECと有意な正相関を示したが,水溶性陰イオン量(SO_4^<2->,NO_3^-とCl^-の合量)は水溶性陽イオン量と比べてかなり少なく,ECとも相関を示さなかった.培養法と80℃水抽出法により評価した可給態窒素は,有機栽培の継続期間が長い土壌および有機物施用量が多い土壌で増加する傾向か見られたが,有機物施用量が多い土壌以外では,増加は統計的に有意ではなかった.山武農場と白浜農場の土壌では,培養法による無機化窒素量と80℃水抽出有機態窒素量は,有意な正相関を示した.可給態リン酸は,有機栽培により増加する傾向が見られたが,倉渕農場では圃場間で有意な差は見られなかった.団粒分析により,沖積土の白浜農場では有機栽培によりマクロ団粒の増加が認められた.しかし,物理性がもともと良好な黒ボク土の圃場では有機栽培によるマクロ団粒の増加は明瞭ではなかった.
- 2013-02-05
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