化学肥料およびきゅう肥連用土壌におけるFusarium oxysporum f.sp. raphaniの生育
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概要
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著者らはダイコンの主要な連作障害である萎黄病原因菌Fusarium oxysporum f. sp. raphani (F. o. r.)の土壌中での生態に関する一連の研究を行いつつあるが,本報告においてはF. o. r. 小型分生胞子の土壌中での生育に及ぼすきゅう肥連用の影響を胞子発芽,菌糸の伸長に注目して考察した.得られた結果を要約すると,1) F.o. r. の小型分生胞子を化肥区,きゅう肥区土壌に接種後,希釈平板法,直接検鏡法によりその生育を測定したところ,非殺菌土壌では両土壌ともF. o. r. の生育が抑制されており,その抑制の程度は化肥区に比べきゅう肥区で著しかった.この抑制効果は土壌をオートクレーブ殺菌することにより消失し,その原因が主に土壌の生物性にあるものと推察された.2)2枚のNucleoporeフィルター(0.8 μm)間に接種したF. o. r. の小型分生胞子を両土壌中に埋設しその後の菌糸の伸長を比較したところ,48時間後の総菌糸長は,化肥区pH=6.6>化肥区pH=4.3≫きゅう肥区pH=4.3>きゅう肥区pH=6.9の順であった.また,その総菌糸長はきゅう肥区のpH=6.9では,接種時と大差のない長さであったのに対し,化肥区のpH=7では接種時の7.9倍に増大し,化肥区では活発に菌糸を伸長させていた.3)F. o. r. の生育に対する炭酸ガスの阻害効果を考慮し,F. o. r. の小型分生胞子を接種したNucleoporeフィルターを土壌の表面に載せ,その後の菌糸の伸長を観察したところ,きゅう肥区では土壌中に埋設した場合と同様の抑制効果が認められた.4)以上のようにきゅう肥区では化肥区に比べF. o. r. の土壌中での生育を抑制していたが,このきゅう肥区におけるF. o. r. 抑制効果はフザリウム菌の発芽までに要する時間,発芽率には影響を及ぼさず,小型分生胞子と菌糸の土壌中での活性抑制,菌糸の伸長抑制に作用しているものと推察された.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1990-12-05
著者
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