生殖生長期水稲の生育および収量に対する低濃度エチレンの影響

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エチレンは, 生長と分化を制御する植物ホルモンの一つであり, 大気中のエチレン濃度が0.1PPm程度に高まると植物の生育に影響を与えることが知られている. 本報告では, 生殖生長期水稲の生育と収量に対する影響を検討した. 実験は, 流量計によって濃度を約0.1ppmにコントロールしたエチレン混合空気を自然光人工気象室内に送り込み, 2週間の暴露処理を行った水稲の生育と収量について解析を行った. 処理は, 1983年には出穂前10日, 4日, 出穂後2日, 11日から, また1984年は出穂前10日, 6日, 出穂日, 出穂後7日に開始し, 両年とも出穂日をはさんだ4時期に処理を行った. 出穂10日前に暴露処理を開始した区では稈長が短縮し, 出穂も約1週間遅延した. 止葉葉身の傾斜角度は暴露処理の時期が早い程大きくなり, 出穂前10日処理区では最大の60°となった. 収量は出穂前処理区で減少し, その原因は1穂穎花数, 稔実歩合, 粗籾千粒重の減少によっている. 特に1984年の出穂前10日処理区では, 無処理区に比べ, 穂重は約20%減少した. また, 出穂後の暴露処理の場合では穂の黄化が早まり, 無処理区では穂長の6%しか黄化していないのに対し, 出穂7日後に処理を開始した区では40%が黄化していたが, 収量への影響は認められなかった. 一方, エチレン暴露処理は, 次代種子の発芽性には影響を与えなかった. 以上のことから, 大気汚染物質として存在し得る0.1ppm程度のエチレンは, 水稲の生殖生長期の穂の分化と発育に影響し収量を低下させる可能性のあることが明らかとなった.
1988-09-05

生殖生長期水稲の生育および収量に対する低濃度エチレンの影響

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