ヒト歯周組織におけるfractalkineとRANKLの発現(第486回 大阪歯科学会例会 抄録)
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概要
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緒言:歯周病患者の病巣にみられる炎症性細胞の浸潤には種々のケモカインが関与していると考えられる.Fractalkine (FK)は培養血管内皮細胞において炎症性サイトカインにより細胞表面に誘導されること,受容体が慢性炎症病変に多くみられる単球やTリンパ球に存在すること,さらに細胞の遊走のみならず接着にも関与することなどの特徴をもつケモカインである.また,重度の歯周病でみられる歯槽骨の吸収は歯の喪失に結びつくが,骨吸収に関して近年,マクロファージの破骨細胞への分化を誘導する破骨細胞分化因子receptor activator of NF-κB ligand (RANKL)が固定され,注目を浴びている.そこで我々は,ヒト歯周組織ならびにlipopolysaccharide (IPS)投与マウスにおけるFKおよびRANKLの発現と局在について検討した.肉眼的に歯周炎の所見がみられない患者の抜歯時などに得られた歯肉組織から凍結切片を作製し,酵素抗体法にて免疫組織染色を行った.またLPSを15mg/kgで6適齢のBALB/cマウスに腹腔内投与し12時間後に取りだした心,肝,腎についても同様に検討した.抗ヒトFKウサギポリクローナル抗体と抗マウスFKウサギポリクローナル抗体はTorrey Pines Biolabsより,抗ヒト/マウスRANKLヤギポリクローナル抗体はSanta Cruz Biotechnologyより入手したものを用いた.結果:ヒト歯肉粘膜下の血管内皮に,肉眼的炎症所見の有無にかかわらずFKの発現がみられた.炎症所見の強い歯肉病変では,浸潤細胞と血管の数が増加していたが,FKの発現は炎症所見に乏しい病変の血管にもみられた.一方,正常およびLPS投与マウスの諸臓器にはFKの発現は見られなかった.RANKLも同様に,ヒト歯肉の血管内皮に発現していたが,炎症モデルマウスの諸臓器には,発現は認められなかった.考察:外来刺激の多いヒト口腔粘膜はFKが血管内皮細胞に恒常的に発現し,免疫担当細胞を粘膜下組織へ迅速に動員できるよう備えている可能性が示唆された.一方,歯肉の血管内皮にRANKLが恒常的に発現されていることは,単球・マクロファージの破骨細胞への分化が血管壁でも起こり得ることを示唆する.しかし単球の破骨細胞への分化には,単球上のRANKと,RANKLに対するdecoy receptorであるosteoproteaerin (OPG)との量的バランスが鍵を握っていると考えられておリ,0PGの歯肉組織での発現および発現量の調節が今後の検討課題である.結語:FKならびにRANKLがヒト歯肉組織に発現され,歯周炎病巣の彫成,歯槽骨の吸収に関与している可能性が示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 2003-03-25
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