ヒト歯周組織におけるfractalkineとRANKLの発現
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概要
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慢性炎症病変である歯周炎の病巣にみられる細胞の浸潤には,種々のサイトカインと接着分子が関与していると考えられる.そこで歯周炎の発症と病変維持の機序を解明するため,慢性炎症病変に多くみられるT細胞や単球の,遊走および接着に関与するケモカインであるfractalkineの発現と局在を,ヒト歯周組織,ならびにlipopolysaccharide (LPS)を投与した実験的炎症モデルマウスを用いて免疫組織化学的に検討した.その結果,(1)ヒト歯肉粘膜下の血管内皮に,肉眼的炎症所見の有無にかかわらずfractalkineの発現がみられた.(2)炎症所見の強い歯肉病変では組織への細胞浸潤と血管の数が増加し,fractalkineの発現も増強していた.(3)コントロールおよびLPS投与マウスの諸臓器にはfractalkineの発現は見られなかった.以上の結果より,外来刺激の多いヒト口腔粘膜ではfractalkineが血管内皮に恒常的に発現して,免疫担当細胞を粘膜下組織へ迅速に動員し,炎症発症の防御に備えている可能性が示唆された.また重度の歯周炎でみられる歯槽骨の吸収には,破骨細胞の活性化が不可欠であると考えられる.そこで,破骨細胞分化誘導因子であるreceptor activator of NF-κB ligand (RANKL)の発現と局在を,ヒト歯周組織で免疫組織化学的に検討し,RANKLもヒト歯周組織の血管内皮に発現していることを確認した.歯肉の血管内皮にRANKLが恒常的に発現されていることは,単球・マクロファージの破骨細胞への分化が血管壁でも起こり得ること,さらにはRANKLが歯槽骨の吸収にも関与している可能性があることが考えられた.以上よりfractalkineならびにRANKLがヒト歯周組織に発現し,それぞれ歯周炎病変の形成および歯槽骨の吸収に関与している可能性が示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 2003-03-25
著者
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