上顎前歯の後方移動前後における口唇周囲軟組織の三次元的な位置変化に関する研究
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概要
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歯科矯正治療の目標には機能の改善と共に審美性の改善が含まれる.そして外科矯正治療だけではなく,一般矯正治療でも顎顔面形態に少なからず変化を与えることが可能である.このため,治療計画の立案時に,あらかじめ術後顔貌を予測することは重要である.そこで今回,非接触型三次元計測装置を用い,以下の研究方法により上顎前歯と口唇周囲軟組織の位置変化を計測するとともに,三次元的評価を行った.研究資料・方法資料として,大阪歯科大学附属病院矯正歯科を受診した,成長が終了したと思われる上顎前歯の後方移動中の上顎前突患者15名を用いた.また対照として,当大学の6年生で矯正治療の既往がなく,顎口腔機能系に自覚的,他覚的に症状のない個性正常咬合を有する者5名を用いた.方法として,上顎前突患者の上顎前歯の後方移動前後の位置と,口唇周囲軟組織の位置を非接触型三次元形態計測装置を用いて計測した.また個性正常咬合者では,口腔模型上で上顎6前歯の唇面の位置を前方へ平行移動させた状態に作製した義歯を装着した際の,口唇周囲軟組織の位置を計測した.計測は被験者の頭部をイヤーロッドで固定して行った.基準座標は,左右イヤーロッドの上縁点(Po)と軟組織上の左眼窩下点(OrL)の3点で決定する面を用い,左右Poの中点(PoC)を原点,原点と左右Orの中点を通る直線をx軸,原点を通り基準平面と直交する直線をy軸としてx,y軸と直交する直線をz軸とする直交座標系を設定した.また計測点は,上顎6前歯の切端中央,ブラケットの中央,臨床歯冠歯頸部の中央と,以下に述べる口唇周囲軟組織上の各点とした.すなわち上唇上縁と下縁の正中と,正中から左右口角までをそれぞれ3等分する点と,左右口角点の12点である.計測結果より歯と上唇の移動量ならびに移動方向について検討した.結果・考察上顎前突患者の上顎前歯と口唇周囲軟組織の移動量の間には口角付近と正中付近において高い相関が認められた.また口角部は上顎前歯の後方移動にともない,左右に広がりながら後方移動することが明らかになった.また個性正常咬合者では,義歯の前方移動量と口唇周囲軟組織の移動量の間に,上顎前突患者で見られたより高い相関が認められた.このことより上顎前歯と口唇周囲軟組織の移動量とのあいだには,後方移動よりも前方移動の方が相関が高いことが示唆された.本研究により,上顎前歯の後方移動後の口唇の三次元的な移動量ならびに移動方向の予測がつき,軟組織形態を含めた治療計画の立案に役立つものと考える.
- 大阪歯科学会の論文
- 2002-06-25
著者
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