3方法で固定した Prevotella intermedia細胞表層構造の画像処理
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概要
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In vitroにおける細菌細胞の微細構造変化を自動画像解析処理装置を用いて計測し数値化することは, 口腔感染症の発症と進展に伴う細菌細胞の微細構造変化を解析するのに役立つ. 本研究では, 口腔感染症の発症と進展に深く関与している Prevotella intermedia (P. intermedia)細胞の表層構造に及ぼす固定の影響を, 電子顕微鏡と画像処理法で詳細な観察と計測および周期構造を解析することによって検討した. 供試菌株は, P. intermedia ATCC 25611 (P. i 25611), ATCC 33563 (P. i 33563)および Porphyromonas gingivalis 381 (P. i 381)を用いた. 電子顕微鏡試料は, 2.5%グルタルアルデヒドと四酸化オスミウム(化学固定, GA-OsO_4)または Kellenberger-Ryter固定液(化学固定, OsO_4単独, KR)で固定した. さらに試料を液化プロパンで瞬間凍結後, ドライアイス-アセトンで冷却した1% OsO_4-アセトン中に浸漬して凍結置換した(物理固定, FS). ついで通法により脱水した試料をエポキシ樹脂混合液に包埋後, 超薄切片を作製して透過電子顕微鏡で観察した. 細胞表層構造の幅はデジタル画像解析処理装置ルーゼックスを用い, 測定部位を二値化後計測した. また, 周期構造はフーリエ変換後のパワースペクトルの高周波成分の検出で確認した. 結果と考察は次のとおりである. 1.画像処理に使用する写真の倍率は目的構造物によって異なる. 本研究では細胞膜の内外葉などを観察する場合, 約24万倍以上に引き伸ばした写真が必要であった. 2. P. i 25611のエンベロープ(細胞膜内葉から外膜外葉まで)の幅はGA-OsO_4, KRおよびFSでそれぞれ39.3, 40.4および31.5nmで, 化学固定の値が物理固定の値より大きかった. GA-OsO_4の場合, 各構造の幅は, それぞれ細胞膜13.0, その内葉4.6, 中層2.7および外葉3.6, 外膜9.2, その内葉2.7, 中層3.1および外葉3.1nmであった. FSの場合, それぞれ11.9, 3.8, 4.4および3.3nm, 11.0, 3.1, 3.7および3.7nmであり, 固定法による差異はみられなかった. 3. P. i 33563の場合, エンベロープの幅はGA-OsO_4, KRおよびFSで, それぞれ33.3, 36.7, および30.1nmで, 固定法による相違はみられなかった. 細胞膜および外膜とその内外葉および中層の幅は, 概してFSの値のほうがGA-OsO_4やKRの値より大きかった. 4. P. g 381の場合, エンベロープの幅は, GA-OsO_4で35.8nm, KRで37.0nmおよびFSで35.8nmであった. 細胞膜および外膜とその内外葉と中層の幅は, P. i 33563と同様にFS の値がGA-OsO_4やKRの値より大きかった. 5.ぺリプラズム間隙をフーリエ変換後, さらに逆フーリエ変換すると, いずれの固定法でもねじれ構造が認められた. ねじれ構造は物理固定より化学固定で多い傾向が認められた. 6.化学固定試料の走査電子顕微鏡所見で観察される細胞表層における粒子構造の周期性をフーリエ変換法で検討したところ, 周期性は認められなかった. 以上の事実は, デジタル画像解析処理装置を用いて P. intermedia細胞の表層構造を詳細に計測し, 周期構造を解析すると, 固定法の影響はペプチドグリカン層とペリプラズム間隙に出現しやすいことを示唆している.
- 1995-08-25
著者
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