下顎骨欠損部への二次的血管柄付遊離骨移植における微細形態および微細血管構築の変化について
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概要
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Microsurgery の進歩に伴い, 広く用いられるようになった血管柄付遊離骨移植は, 従来の顎骨欠損部の再建方法と比較して非常に安定した成績が得られるようになってきた. しかし, 血管柄付遊離骨移植では, 解剖学的に血管柄となる動・静脈束からの血行のみで骨が十分に栄養される部位からしか donor を採取できず, また血管柄の長さにも制限を受けることなどから, 複雑な形態をもつ顎骨の再建に適した donor を得ることは困難である. 一方, 伴行する動・静脈間には microcirculation があり, これらの動・静脈を血管束として長管骨内に移植することによって, 二次的に血管柄付遊離骨移植の donor が作製し得ることが報告されているが, 血管束を移植した骨髄内での血行動態は明確にされていない. また, 二次的に作製した donor を骨欠損部の再建に用いた研究もみられない. そこで本研究では, 血管柄付遊離骨移植の donor を二次的に作製し, 顎骨欠損部の再建に応用することを目的として以下の実験を行った. 実験1では, 家兎の伏在動脈および伴行する内側伏在静脈を血管束として脛骨骨髄内に移植することにより donor を作製し, 移植血管束と骨髄内既存血管との連続性について, 従来の二次元的な観察に加えて, 微細血管鋳型標本を作製し走査電子顕微鏡にて三次元的に観察した. その結果, 移植後3日より移植血管束周囲では内骨膜付近の洞様血管網からの新生洞様毛細血管形成がみられた. その後新生洞様毛細血管は新生血管綱を形成し, 移植後1週には骨髄内既存血管と, 移植後2週には移植血管束と吻合した. 移植後3週で新生毛細血管網は最も密になり, 移植血管束および骨髄内既存血管への文通枝も最も多く認められたため, donor として血管柄付遊離骨移植に用いる最適な時期は移植後3週であることが示唆された. 実験2では, 実験1の方法で作製した donor を移植後3週で離断し, 家兎の下顎骨に作製した欠損部に自家移植後, 血管束を顔面動・静脈と吻合することにより二次的血管柄付遊離骨移植を行い, 移植後の経時的変化を三次元的に観察した. その結果, 脛骨のみを下顎骨欠損部に遊離自家骨移植した対照群では, 移植骨は移植後2週より吸収され, その後母床骨である下顎骨に由来する血管の侵入によりしだいに再構築されてゆくのに対し, 実験群では移植直後より donor の骨髄内既存血管から新生毛細血管が形成され, 移植後2週で下顎骨由来の新生毛細血管と吻合した. ついで新生骨が形成され, 対照群と比較して下顎骨と早期に骨癒合し, 移植骨の吸収もはとんど認められなかった. 以上の結果より, 解剖学的制限を受けずに, 自由に骨と血管束を組み合わせて二次的に作製するまったく新たな血管柄付遊離骨移植の donor の作製が可能であることと, その顎骨再建への応用の可能性が確認できた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-04-25
著者
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