乳歯列期および混合歯列期小児の咀嚼運動経路の分析
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概要
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ヒトの咀嚼運動経路は, 吸啜から咀嚼行為へ転換ののち, 乳歯列, 混合歯列, 永久歯列への変遷につれて変化していく. 咀嚼運動経路についての報告は, 永久歯列では多くみられるが, 乳歯列, 混合歯列での研究は少なく, とくに同一被験者での成長発育に伴う, 経路の相違についてはほとんどみあたらない. そこで本研究では, 小児の咀嚼運動経路の計測を乳歯列期に行い, ついで, 同一被験者の混合歯列期にも測定し, 各個人の経路の相違を分析した. さらに, 乳歯列期小児群(乳歯列期)および混合歯列期小児群(混合歯列期)の咀嚼運動経路を, 成人正常有歯顎者群(成人)と総括的に比較することによって, その特徴を検討した. 被験者は, 個性正常咬合を有する乳歯列期小児10名で, そのうち6名は, 上下顎第一大臼歯萌出完了期にも実験を行った. また, コントロールとして成人10名についても測定を行った. 被験食品には, カマボコを, 計測にはMKG-K6システムを用いた. その結果 1. 同一被験者における乳歯列期と混合歯列期との相違 1)時間的パラメータ 開口相時間, 閉口相時間, 咬みしめ時間およびサイクルタイムでは, 被験者のうちの約半数が, 混合歯列期のほうが長くなり, 他は短いか, 有意の差がなかった. 2)移動量パラメータ 最大開口距離および最大前後移動距離は, 半数の被験者で混合歯列期のほうが長くなり, 1名は短く, それ以外は有意の差がなかった. 最大側方移動距離は, 混合歯列期のほうが長くなった1名および有意の差がなかった1名を除いて, 他の被験者では短くなった. 3)速度パラメータ 最大開口速度は, 半数の被験者は混合歯列期のほうが速くなり, 1名は遅くなり, それ以外は有意の差がなかった. 最大閉口速度は, 2名は混合歯列期のほうが速くなったが, 他は有意の差がなかった. 2. 乳歯列期および混合歯列期の咀嚼運動の特徴 1)時間的パラメータ すべてのパラメータについて, 乳歯列期および混合歯列期の両者間, そして両者と成人との間に, 有意の差を認めなかった. 2)移動量パラメータ 最大開口距離および最大前後移動距離は, 乳歯列期から混合歯列期, 成人になるにつれて長くなった. このとき, 乳歯列期と混合歯列期との間には有意の差はなかったが, 乳歯列期と成人および混合歯列期と成人, の間には有意の差が認められた. 最大側方移動距離は, 混合歯列期と成人とではほとんど変わらなかったが, 乳歯列期では, 混合歯列期および成人よりも有意に長かった. 3)速度パラメータ 最大開口速度および最大閉口速度は, 乳歯列期, 混合歯列期, 成人の順に速くなった. このとき, 乳歯列期と混合歯列期との間には有意の差は認められなかったが, 成人と他の二つの時期との間には有意の差が認められた. 以上のことから, ヒ卜の咀嚼運動経路は, 乳歯列期から混合歯列期へと成長するにつれて, 個体差が認められるものの, 全体的には成人に近づく傾向にあった. しかし, 最大側方移動距離だけは, 各個人ともに混合歯列期に大きく減少し, 成人に近い値をとることが明かになった.
- 1993-08-25
著者
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