コンポジットレジンでMOD窩洞を充填した場合の歯の変形について
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概要
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歯冠修復材としてコンポジットレジン(以下レジンとよぶ.)の実用化が始まって以来25年の間に, レジンの物理的性状と歯質接着性は飛躍的に向上し, それにつれてレジン自体の重合収縮率や吸水量も少なくなった. しかし重合収縮は依然としてレジン・窩壁間の接着を阻害する最大因子であり, とくに光重合型レジンでは窩洞の深部での内部応力が大きくなるために収縮の影響が強く現われることが知られている. 一方, レジンの吸水膨張は充填体の窩壁適合性からみると重合収縮を補正して内部応力を軽減させる要因とされている. これまで重合収縮期の歯の変形については報告されているが, 収縮期から吸水膨張期を通じた長期間の歯の変形の推移についてはまだ検討されていないし, また接着性修復を施した歯の窩洞の大きさと歯の変形の関係についても検討されていない. これは現在使われている計測機器が精度は高いが, 長期間にわたって計測を繰返すような実験には適していないことによるものである. そこで著者らは, 被験体に核印した60μm前後の微少な測定点間の変化を1,000倍の拡大率の顕微鏡で直接計測する方法を考案し, この方法によってレジンを充填した歯の変形を観察することにした. 実験1として, レジンの収縮特性を知るために無機フィラー含有率の異なる4種類のレジンを選び, アクリル板に形成した円筒形の窩洞に充填して垂直方向と水平方向の重合収縮率を測定した. その結果, 歯の変形に直接関与すると考えられる水平方向の収縮率は必ずしもフィラー含有率に従わないことが判った. 実験2として4種類のレジンの吸水量と吸水膨張率を測定した. その結果はこれまでの報告を裏付けるもので, 吸水量と吸水膨張率はともにフィラー含有率に反比例していた. 実験3では, 咬頭頂に定点を刻印した上顎小臼歯にMOD窩洞を形成し, 実験1で収縮率が最も大きかったレジンを充填し, 重合前と重合後の咬頭頂間距離を測定した. その結果, 窩洞の幅と深さが大きくなるに従って咬頭頂間距離の短縮は大きくなった. 実験4ではMOD窩洞の近心または遠心側に側室を付与した上顎小臼歯を近遠心的に半切し, 断面に歯の頬舌側の輪郭に沿って咬頭頂部から歯頸部下まで定点を核印し, 実験3と同じレジンを充填して重合前後における頬舌径を測定した. その結果, 頬舌径の短縮量は咬頭頂部が最大で歯根側に近付くに従って小さくなり, 側室が付与された窩洞のほうが収縮量が大きくなった. 実験5では, 両隣接面に側室を付与したMOD窩洞に4種類のレジンをそれぞれ充填し, 重合前後および水中浸漬中の咬頭頂間距離を測定した. その結果, 重合収縮による咬頭頂間の短縮量はレジンの水平収縮率に比例し, 吸水膨張による咬頭頂間の拡大はレジンの吸水膨張率に比例した. 以上のことから次のような結論が得られた. 1. 窩洞の形態および大きさと歯の変形との関係についての実験結果は, これまでに報告された窩洞を形成した歯の咬合圧に対する抵抗性の研究結果と表裏一体の関係を示したが, 接着性修復において歯の抵抗性の減衰が修復歯に不利に作用するか否かは判然としない. 2. レジンの水平的収縮率と咬頭頂間の短縮量が比例的関係を示したということは, レジンのフローが内部応力の軽減に役立つ可能性があるという説を裏付けるものであるといえる.
- 1993-04-25
著者
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