顆頭運動からみた咀嚼時の外側翼突筋上頭の筋電図学的研究
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概要
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ヒ卜の外側翼突筋上頭の機能については不明な点が多い. 本研究の目的は, 咀嚼時の外側翼突筋上頭の顆頭運動に対応した機能特性や外側翼突筋下頭との協調性について筋電図学的に検討することである. 被検者は正常有歯顎者男子5名である. 被検筋は習慣性咀嚼側の外側翼突筋上頭 (SLpt), 下頭 (ILpt), 顎二腹筋前腹 (Da), 側頭筋後部 (Tp) および咬筋 (Mm) の計5筋とした. 咀嚼時の上記5筋の筋電図と被検筋側の顆頭運動およびMKG切歯点運動の同時記録を行った. 顆頭運動は半導体位置センサー (松本ホトニクス社製PSD C 1373) を用いた. 記録された波形の計測の基準点は顆頭の位置を基準とし, 顆頭が咬合相終末から前下方へ動き始める点O, 咀嚼時最も前下方にある点P, 顆頭点の運動曲線が水平となる点, つまり顆頭が復位した点R, MKG vertical, velocity曲線が水平となる歯の接触時点 (TC) とした. 前ストロークのうち最も遅い筋電図のoffsetから点Oまでを区間α, 点OからPまでを区間β, 点Pから点Rまでを区間A, 点Rから点TCまでを区間B, 点TCから筋電図のうち最も遅いoffsetまでを区間Cとし, 5区間を分析の対象とした. 点Pを基準とした各筋のonset, offset, 各区間における各筋のdurationと筋活動の積分値を計測し, 作業側と平衡側別にtime and power coordination patternを作図した. データの有意差検定は被検者, 筋, 咀嚼側, 被検食品を主変動因子とする分散分析法による統計処理を行った. SLptのonsetは点Pとほぼ一致し, Tp, Mmに比べて有意に (p<0.001) 早かった. また, SLptのonsetは食品差に関わりなくほぼ一定であった. この3筋のoffsetは有意差はなく, durationはSLptが有意に (p<0.001) 長かった. ILptとDaはともに点Pよりoffsetが早かった. 作業側では全被検者に, 平衡側では4名に区間A, BにILptの活動がみられた. 筋活動量については作業側では蝶番運動をしている区間Bの時間が長く (150.8msec), 平衡側では短かった (25.8msec). 1ストローク中各区間での筋活動量は作業側でSLpt, Tp, Mmは区間Bで大きく, 平衡側では区間Bで小さく, 区間Aで大きかった. 区間別比率ではこの3筋に有意差はなく, SLptとTpはよく似た傾向を示し, time and power coordination patternではSLptは区間Bでの平均電位の増大傾向からMmに近かった. 1ストロークあたりの積分電位は5筋のうちTp, Mmが作業側で, SLpt, ILpt, Daは平衡側で有意に (p<0.01) 大きかった. 以上の結果より, 外側翼突筋上頭は咀嚼時の顆頭運動と密接な関係があり, 円滑な咀嚼運動に対して重要な役割を果たしていることが示唆された. 上頭は顆頭運動に対応して二相性の機能が考えられた. すなわち, 第一相は主として平衡側で, 顆頭の復位運動中における関節円板および顆頭の位置と速度を調整する機能であり, 第二相は主として作業側での咀嚼力の増加に対応して, 咀嚼力が作用する方向を関節結節に向け, 顆頭と関節板を位置付ける機能である. また, これらの機能は外側翼突筋下頭の補助的活動により完遂されることも示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-04-25
著者
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