アナボリック ステロイドがラット頭蓋顔面の成長発育に及ぼす影響について
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概要
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頭蓋の成長発育に, それに付着する筋の機能力が与える影響を解明しようと現在までさまざまな研究が行われてきた. それらには, 1) 軟食物を摂取させることにより筋機能の低下をはかり頭蓋形態の差異を検討したもの, 2) 筋肉, 軟組織の切除による頭蓋形態の変化を検討したもの, 3) 咀嚼筋に関する運動神経の切断, もしくは損傷による頭蓋形態の変化を検討したものなどがあるが, いずれの実験も条件が筋機能を低下させるように設定されたものが多く, 亢進させた条件はあまり見あたらない. アナボリック ステロイドは蛋白同化作用を有しているので, 骨粗鬆症や, ターナー症候群などの発育不全の患者に治療薬として使用されている. また, アナボリック ステロイドをラットに投与すると, 筋肉中の速筋線維を肥厚させ, fatigue resistanceを著明に向上させることが確認されている. それゆえ, この薬剤は筋肉増強剤としても注目されている. 今回, アナボリック ステロイドの一種であるnandrolone phenylpropionateの連続投与が, ラット頭蓋の成長発育にどのような影響を及ぼすかについて検討した. 実験動物として, 4週齢の雌性SD系ラット120匹を1週間飼育したのち実験に用いた. ラットは1つのプラスティックケージに3匹ずついれ室温20±2℃, 湿度60%, 明暗周期は12時間, 飼料は固形飼料を水とともに自由に摂取できるようにした. なお, 飼料の他に栄養補給は, いっさい行わなかった. 実験群には, nandrolone phenylpropionate 1mgを, 対照群には, vehicleとしてarachis oilを, それぞれ隔日に肩甲骨間部に皮下注射し, 10日ごとに体重を計測した. 生後60日, 120日目にラットをクロロホルムにて屠殺し頭部を離断, 10%中性ホルマリンで固定後, 頭蓋骨の矢状縫合に沿って硬組織用カッティング・マシーンで頭頂骨から下顎骨まで左右に二分した. 分離した頭蓋骨の内側をフィルム面に接して置き, 軟エックス線撮影装置を用いて, 36kVp 2mA 30sec, 焦点フィルム間距離27cmの条件で頭部エックス線規格写真を撮影した. 得られたエックス線写真を引伸機にて4倍大に拡大しその写真上で, Engstromらが開発し, Kiliaridisらが改良した方法を用いてパーソナルコンピューターを用いて分析を行った. その結果, 実験群は対照群と比較して1. 体重が約20%増加していた. 2. 頭蓋の全長が増加し, とくに顔面頭蓋を形成する骨の増加が著しかった. 3. 上下顎切歯の歯冠長が増加していた. 4. アンチゴニアル・ノッチの深さが増加していた. 5. 顔面頭蓋の脳頭蓋に対する成長方向が前下方に変化した. 以上のことから, nandrolone phenylpropionateの連続投与は, 雌ラットの頭蓋の成長発育を促進させ, また咀嚼筋機能を亢進させることが示唆された.
- 1992-04-25
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