口腔内から分離したCapnocytophagaの同定
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概要
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Capnocytophagaは通性嫌気性のグラム陰性桿菌であり, 二酸化炭素存在下で発育が促進される. 本菌は, 鞭毛をもたないが, 滑走運動を行うことにより, 平板培地上で広がりをもつ特徴的なコロニーを形成する. Capnocytophagaは口腔内から分離され, とくに若年性歯周炎の歯周ポケットから高率に分離されている. Bergey's manual of systematic bacteriologyではCapnocytophagaは, C. ochracea, C. gingivalisおよびC. sputigenaの3菌種に分類されている. 当教室でも種々の口腔感染症や口腔常在菌叢からCapnocytophagaと考えられる菌株を分離しているが, 表現形質がBergey's manual of systematic bacteriologyの記載と一致せず, speciesまで同定できない菌株が多い. 本実験では, マイクロプレートハイブリダイゼーション法を用いてCapnocytophagaを同定し, 表現形質での同定との一致率について検討した. 供試菌株にはATCC strainとしてC. ochracea ATCC 27872, C. gingivalis ATCC 33624およびC. sputigena ATCC 33612の計3株および教室保存のCapnocytophagaのうち, 歯周ポケット由来株53株, 小児の白血病患者の唾液由来株3株および根尖病巣由来株1株の計57株を実験に用いた. すべての菌株に対してコロニー形態, グラム染色性, 好気やCO_2存在下での発育, グルコースからの終末代謝産物, 29種類の炭水化物の分解性, インドール産生性, 硝酸塩還元性, ゼラチン液化能, スターチとエスクリン加水分解性, カタラーゼ産生性, バイル存在下での発育, orto-nitro-phenyl-β-D-galactoside (ONPG) の加水分解性およびAPI ZYMでの酵素活性を検索した. DNAの抽出はMarmur法で, DNA-DNAハイブリダイゼーションは江崎らの方法で行った. すなわち, ATCC strainのDNAを固定したマイクロプレートの各ウエルにプレハイブリダイゼーション液で前処理し, フォトビオチンで標識した臨床分離株のDNAを含むハイブリダイゼーション液を加えた. このプレートを40℃で2時間インキュベートしたのち, β-D-ガラクトシダーゼ・ストレプトアビジンを添加し, 37℃で30分間インキュベートした. さらに, 4MUF-β-D-ガラクトピラノサイドを加えたのち, 15分おきに蛍光強度を測定した. 被験菌のATCC strainに対する相同性は, もっとも高い値を示したものを100%とし, 陰性対照のE. Coliの値を0%として計算した. 結果 1. Capnocytophagaを表現形質で同定した結果, 33株がC. ochracea, 11株がC. sputigenaおよび7株がC. gingivalisであり, 6株は未同定株とした. 2. DNA-DNAハイブリダイゼーション法では26株がC. sputigena, 24株がC. ochraceaおよび7株がC. gingivalisと同定された. 3. 表現形質およびDNA-DNAハイブリダイゼーション法で同定を行った場合の一致率はC. gingivalisでは100%であったが, 他の2菌種では20%以下であった. 本実験の結果から, Capnocytophagaの表現形質による同定ではONPGが, C. gingivalisと他の2菌種を区別するのに有効であった. トリプシン活性はすべてのC. gingivalisに認められたが, C. ochraceaとC. sputigenaにも1株ずつ産生株がみられたので, 鑑別性状にはならなかった. API ZYMを含め, C. ochraceaとC. sputigenaを区別するための性状は本実験では見当たらず, この2菌種を区別するためにはこれまでのところDNA-DNAハイブリダイゼーション法が最も有効な手段である.
- 1991-08-25
著者
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