腫瘍細胞の増殖能に対するヒアルロン酸の調節作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
腹水型TS細胞のin vitro培養株 (CTS細胞) を対象に, 細胞集団の増殖時期に対するconditioned medium (CM) の調節作用と細胞増殖に及ぼすヒアルロン酸 (HA) 添加の影響を検討した. 細胞増殖時期の調節に用いたCMは, 5%のウシ胎児血清を添加したDulbecco's modified Eagle培養液 (complete DME) 中でCTS細胞を7日間培養し, 培養開始0日目から7日目まで24時間ごとに回収した培養上清 (CM-0〜CM-7) である. Complete DME中で培養したCTS細胞は, 培養開始後4日目まで活発な増殖を続け, 5〜7日目にかけて定常状態を示した. これに対し, CMを培養液としたときのCTS細胞は, CM-0〜4中では活発に増殖し, CM-5〜7中では増殖能を減弱して定常状態を示し, complete DME中で培養したときとほぼ同じ細胞増殖パターンを再現した. CMで増殖時期を調節したCTS細胞に各種濃度 (0.01〜100μg/ml) のHAを作用させると, HAは増殖能が高い時期の細胞に対しては増殖を抑制し, その作用は1.0μg/mlのときに最も強かった. しかし, いずれの濃度のHAも定常期の細胞に対しては増殖を促進し, その作用は100μg/mlのときに最も強かった. 以上の結果から, CMによってCTS細胞の増殖時期は任意に調節でき, また, 培養液に添加したHAはCTS細胞の増殖を増殖時期に応じて促進, あるいは抑制する二面性の作用をもつことが明らかになった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1991-08-25