糖尿病ラットにおける細小血管症について
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概要
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糖尿病における網膜と歯肉内縁上皮の細小血管症について, 太田らの方法により微細血管鋳型標本を作製し, 微細血管構築の変化を立体的に走査電顕で観察した. また網膜毛細血管壁の超微形態の変化についても観察した. その結果, 網膜微細血管構築では糖尿病発症後10週より細小血管症が出現し, 16週後では, 硝子体側と脈絡膜側の毛細血管網は粗く平面的となった. 20週後では毛細血管瘤を認め, 硝子体側, 脈絡膜側の毛細血管網は粗く, 毛細血管は部分的に狭窄し文通枝は減少した。また毛細血管の分布密度は低下し, 2層構造は不明瞭であった. 網膜毛細血管の超微細形態では, 糖尿病発症後16週から基底膜に部分的な軽度の肥厚を認め, 20週後の基底膜では部分的な肥厚を呈し, 剥離して重層化しているものもあった. 周皮細胞には飲小胞をほとんど認めず, 内皮細胞には扁平化, microvilli様の突起の減少, 空胞変性を認めた. 歯肉内縁上皮の微細血管構築では, 糖尿病発症後6, 10, 16週でほとんど変化を認めなかった. しかし20週後から急激に細小血管症が出現し, 歯肉内縁上皮下方の毛細血管網は粗雑となり, 上方の歯肉内縁上皮では毛細血管loopの高さが低くなり, 連珠状の毛細血管を呈した. 以上のように, 網膜における細小血管症は段階的に進行していくが, 歯肉内縁上皮では糖尿病発症後20週から急激に血管構築の変化が出現した. したがって, 網膜の変化の観察は, 糖尿病病期決定に有用であることが確認され, 糖尿病罹患期間が長くなると, 歯肉内縁上皮にも細小血管症が出現することが明らかとなった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-08-25