6407 ラット頸部リンパ系への脳脊髄液吸収経路の形態学的検討
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概要
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脳脊髄液の頸部リンパ系への排出経路を形態学的に検討する目的で, ラットを用いて, 30μLのトレーサー(lndia ink)を側脳室内に注入し, 頭蓋外へのトレーサーの排出状況を肉眼的, 組織学的に観察した. さらに, 実体顕微鏡下で, ラット深頸部における最大のリンパ節である上深頸リンパ節輸入管ヘトレーサーが到達するまでの時間を測定した. それぞれのラットの頭蓋腔コンプライアンス(Co)を算出し, トレーサー到達時間との関係を求め, 経リンパ脳脊髄液吸収経路の機能を検討した. その結果, 全てのラットにおいて, トレーサー注入後30分以内に上深頸リンパ節輸入管が濃染し, 染色までの時間とCoとの間には正の相関関係を認めた. 形態学的には, 嗅球直下のクモ膜下腔に炭素粒子が集積し, 嗅神経の神経鞘を介して舗板を貫き, 鼻粘膜下固有層に漏出した. さらに, この部位における洞様のリンパ管に取り込まれ, 一部が鼻部皮下組織から浅頸リンパ節へ, 大部分が鼻粘膜下のリンパ管網を通って上深頸リンパ節へ排出された. トレーサーは眼窩内視神経鞘および鞘外組織にも認められた. 一部のラットでは, この部位から眼窩吻側の皮下リンパ管へ排出されたが, その程度は極めて小さかった. なお, 頸椎の椎間孔付近の組織や遠位の腹腔内傍大動脈リンパ節の染色は認められず, 30分以内では脊髄神経根からの直接的な漏出や, 血行を介したリンパ節染色はないことが明らかとなった. 以上の結果より, 節板を貫く嗅神経鞘を介した鼻粘膜組織への経路が, 直接的に脳脊髄液と頸部リンパ系とをつなぐ最大の経路であり, その機能も頭蓋内圧上昇に対する緩衝機構として, きわめて精巧に作動しているものと考えられた.
- 2001-06-25
著者
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