Vitamin C欠乏および卵巣摘出によるラット下顎頭変化の免疫組織化学的研究(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
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概要
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Vitamin Cは骨基質の形成に必要なコラーゲンの生合成に関与している.そのため, Vitamin C欠乏状態では骨形成不全, 続発性の骨粗鬆症などの症状を呈することが知られている.しかし, 下顎頭の変化については詳細に検討されていない.一方, 卵巣摘出により下顎頭軟骨は軟骨内骨化の過程が障害されるといわれているが, Vi-tamin C欠乏状態で卵巣摘出を行い, 下顎頭の変化を検索した報告はない.そこでアスコルビン酸合成能欠如ラット(以下, ODSラット)を用いて卵巣摘出を行い, 下顎頭の変化を組織学的に検討するとともに, コラーゲンの分布について免疫組織化学的に検索した.実験材料および方法 実験には8週齢Wistar系ラットおよびODSラットを使用し, それぞれ卵巣摘出を行ったもの(卵巣摘出群)と行わなかったもの(無処置群)とに分けた.すなわち, 第1群(対照):Wistar系ラット無処置群, 第2群:Wistar系ラット卵巣摘出群, 第3群:ODSラット無処置群および第4群:ODSラット卵巣摘出群とした.実験開始後2, 4および6週にジエチルエーテル吸入とペントバルビタールナトリウム腹腔内投与による全身麻酔下で開胸後, ヘパリン加生理食塩水を左心室より上行大動脈へ注入しながら脱血により安楽死させた.その後ただちに4%パラフォルムアルデヒドにて潅流固定し, 顎関節を摘出した.さらに同液にて浸漬固定後, 10%EDTAにて脱灰, 通法に従いパラフィン連続切片を作製して組織学的に検討した.またI型, II型およびX型コラーゲンの局在をLSAB法にて免疫組織化学的に検討した.一次抗体として, 抗ラットI型コラーゲンウサギポリクローナル抗体(エル・エス・エル, 東京), 抗ウシII型コラーゲンウサギポリクローナル抗体(Chemicon Inter-national INC., Temecula, Ca, USA), および抗ラットX型コラーゲンウサギポリクローナル抗体(エル・エス・エル, 東京)を用いた.結果 第1群は実験期間を通じて軟骨層では肥大軟骨細胞層の厚みは緩徐に減少していたが, 軟骨層直下の骨梁にはほとんど変化が認められなかった.免疫組織化学的にはI型コラーゲンは線維層, 増殖細胞層および成熟細胞層の表層で弱い陽性反応を示した.II型コラーゲンは成熟細胞層から肥大軟骨細胞層にかけやや弱い陽性反応を示し, 骨梁部にも一部陽性反応が認められた.X型コラーゲンは実験初期では侵食線を中心に肥大軟骨細胞層に強い陽性反応を示したが, 実験後期には陽性反応は侵食線に限局していた.第1群と比較して第2群では軟骨層は一時的に肥大軟骨細胞層の増大により厚みを増し, またI型, II型コラーゲンに対する反応性には変化が認められなかったが, X型コラーゲンに対する反応性はやや減弱していた.一方, 第3群では軟骨層は実験初期に肥大軟骨細胞層の増大により厚みを増していたが, 実験後期には軟骨層は菲薄になっていた.軟骨層直下の骨梁は減少し, 骨髄腔に線維性組織の増生を認めた.I, IIおよびX型コラーゲンに対する反応性は減弱していた.第4群では軟骨層は菲薄になり, 軟骨層直下の骨梁は連続性を失い, 骨髄腔は線維性組織で満たされていた.また, I型, II型コラーゲンに対する反応性は減弱し, X型コラーゲンでは消失していた.結論 Vitamin C欠乏は下顎頭軟骨の菲薄化を生じ, 軟骨内骨化の過程を障害することが確認された.これに卵巣摘出によるエストロゲン欠乏が加わると, さらに骨および軟骨の脆弱化を生じ下顎頭の変形を認めることが判明した.
- 大阪歯科学会の論文
- 2000-06-25
著者
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