歯の移動時のラット歯根面における細胞接着分子に関する免疫組織化学的研究
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概要
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人為的な歯の移動により惹起される歯根吸収の発現部位に関して, 圧迫側歯根面についての報告はみられるが、牽引側歯根面における報告は少ない.そこで, 本研究では, ラットの上顎第一臼歯の牽引側歯根面に注目し, その歯根吸収像を光顕的に観察し, さらに細胞接着分子であるvitronectinの局在について免疫組織化学的に観察した.歯の移動は, Waldo法に準じ, ゴム片(A群(32匹):1×1×0.65mm, B群(32匹):1×1×1.0mm)をラットの左側第一臼歯および第二臼歯部に挿入し, 右側臼歯部は未処置のまま対照群とした.1, 3, 5, 7日後にHE染色とトルイジンブルー染色, ならびにデキストランポリマー法によるvitronectinの免疫染色を行った.ゴム片挿入後, 1日目および3日目の実験群では, A・B群とも牽引側歯根表面にvitronectinの局在は確認できなかったが, 歯槽骨面では破骨細胞によるびまん性ならびに穿下性吸収像が認められた.5日群および7日群の牽引側歯根表面では, 破歯細胞と考えられる多核巨細胞が見られ, その周辺部にvitronectinの局在を認めたが, 7日群では5日群と比較し, vitronectinの局在は歯根表面の広い範囲に及んでいた.対照群では, A・B群とも全観察期間を通じて, vitronectinの局在は認められなかったが, 歯槽骨面では破骨細胞によるびまん性の骨吸収像が認められた.A・B群ともにvitronectinの局在に関して著明な差は認められなかったが, 歯根吸収は, わずかにB群のほうがA群よりも強く認められた.本実験では, 5日群よりも7日群において, 牽引側歯根面で歯根吸収像およびvitronectinの局在が広範囲に認められた.以上より, 牽引側歯根面でも, 破歯細胞がvitronectinを介在して歯根表面に接着し, かつ歯根膜線維が伸展されることで歯根吸収が進行していくと考えられた.また, 牽引側歯根面におけるvi-tronectinの局在は, 矯正力の大きさよりも矯正力の作用時間による影響を強く受けいることが示唆された.
- 1999-12-25