乾燥頭蓋骨におけるマルチブラケット装置装着時の力系に及ぼす各種ヘッドギャーの影響
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概要
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近年, 矯正歯科臨床で広く用いられているマルチブラケット装置では, 各種ヘッドギヤーが補助装置として使用されることが多い. その使用目的は, 口腔内の固定を加強することと, 口腔内の装置だけでは得られない力系を作りだすことにある. 現在まで, ヘッドギャー単独の解析はなされているが, マルチブラケット装置と併用したヘッドギヤーの力系に及ぼす影響の解析はほとんど行われていない. そこで, 乾燥頭蓋骨をシミュレーションモデルとし, 各種ヘッドギャーがマルチブラケット装置の力系にどのような影響を与えているのかを検討する目的で実験を行った. 実験材料として, 永久歯がすべて萌出している成人乾燥頭蓋骨を使用した. また, 乾燥頭蓋骨には, 歯根膜空隙ならびに縫合部に接着剤を注入し, 歯槽骨部を中心にして, 11計測部位にシアノアクリルレー卜系接着剤を用いて直角3軸型ロゼットゲージを接着した. 本研究は, マルチブラケット装置におけるヘッドギャーの作用を解析するのが目的であるので, 乾燥頭蓋骨の上顎第一大臼歯, 第二大臼歯にエッジワイズブラケットおよびエッジワイズチューブつきのバンドを装着し, 前歯ならびに小臼歯には0.022インチスロットのエッジワイズブラケットを接着した. そして, 0.021×0.025インチのエッジワイズワイヤーをチューブおよびブラケットにパッシブとなるように屈曲して, 挿入結紮した. また, 顎外力を歯列弓に伝えるためのヘッドギャーは, フェースボーヘッドギャーと, Jーフックヘッドギャーのものを使用した. 上記のように処理をした乾燥頭蓋骨は, 着脱が容易で, 荷重時頭蓋骨の移動がなく, ヘッドギャーの牽引方向が変更可能な固定装置に固定した. 乾燥頭蓋骨に装着したヘッドギャーに加える荷重量は, 使用するストレンゲージのひずみが十分測定できる範囲のもので, その荷重によって乾燥頭蓋骨にクリープ現象が認められず, 荷重量の変化とひずみ量の変化との関係が直線的である範囲として5および 8kgを使用した. 加力装置として引っ張り試験機(Shimadzu AUTO-GRAPH S-100)を使用し, 各ストレンゲージのひずみは, 多点切り替え装置を経て小型デジタル測定機に記録した. その結果, フェースボーヘッドギャーでは, 1.ストレートプルヘッドギャーにおいて, 上顎歯列弓の側方拡大を伴う遠心移動に加えて, 前歯部の延長傾向を示すひずみ分布がみられた. 2.ハイプルヘッドギャーにおいては, 上顎歯列弓の側方拡大はストレートプルヘッドギャーより少なく, 歯列弓の遠心移動に加えて前歯部の圧下傾向を示すひずみ分布がみられた. この圧下傾向は, アーチワイヤーのたわみのためか, 前方へ向かうほど小さくなっていた. また, Jーフックヘッドギャーでは, 中切歯, 側切歯間のフックを使用したものより, 側切歯, 犬歯間のフックを使用したもののほうが, 前歯部に強い垂直方向の圧縮ひずみがみられた. しかし, 歯列弓の拡大はわずかであった. 以上のことから, 各種ヘッドギャーの力系が矯正装置を介して生体に異なった反応を与えることが明確にされ, 矯正歯科臨床領域に使用上の示唆が得られた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-09-25
著者
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