急性リンパ性白血病患児の唾液由来 penicillin G 耐性 Capnocytophaga の薬剤感受性とβ-lactamase 活性
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概要
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強力な抗癌剤の多剤併用療法の導入と支持療法のために, 白血病患児は原疾患に加えて, つねに免疫抑制状態におかれている. このため短期間のうちに感染症が重篤化し, 現在でもしばしば死亡の原因となっている. 血液腫瘍疾患に随伴して起こるおもな感染症は, 敗血症と上・下気道感染症で, その起炎菌として各種グラム陽性菌および陰性菌が検出されている. 敗血症起炎菌の感染源を特定することは困難である. しかし, 口腔由来とみられる細菌として Streptococcus mitis, S. sanguis および他の α 溶血性レンサ球菌, Bacteroides, Fusobacterium nucleatum, Propionibacterium acnes および Capnocytophaga などが報告されている. Capnocytophaga は, 発育に CO_2 を要求するグラム陰性桿菌で, 敗血症以外に若年性歯周炎, 心内膜炎および敗血症性関節炎の原因菌にもなっている. これらの疾患を有する患者から本菌を分離し, MIC を測定した結果, アンピシリン (ABPC) や数種のセフェム系薬剤に耐性を示すことが報告されているが, その耐性機構についてはまったく論じられていない. 本研究では, 急性リンパ性白血病患児の口腔から分離したペニシリン G (PCG) 耐性 Capnocytophaga と Prevotrlla の菌株の薬剤感受性ならびにその耐性機構に果たすβ-lactamase と外膜透過性の役割を検討した. 供試菌株は, 1990年に兵庫県立ことも病院に入院していた急性リンパ性白血病患児の唾液から分離した Capnocytophaga 14株と Prevotella 11株を用いた. MIC は, 化学療法学会標準法の嫌気性菌の MIC 測定法に準じ, 22薬剤を用いて寒天平板希釈法で測定した.β-Lactamase 産生性はニトロセフィン法とアシドメトリーディスク法で, その活性はミクロヨード法で測定した. また, 外膜透過性の障害はエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 (EDTA-2Na) 添加寒天平板希釈法で調べた. PCG 耐性 Capnocytophaga と Prevotella に対するイミペネム (IPM), セフテラム-ピボキシル (CFTM-PI), クリンダマイシン (CLDM) およびオフロキサシン (OFLX) の MIC_<90> は 1.56〜100μg/ml を示した. これら以外の供試薬剤の MIC_<90> は ≧200μg/ml であった. 全供試菌でβ-lactamase 活性は検出され, ほとんどの酵素が, 基質セファゾリン (CEZ) とアンピシリン (ABPC) の両方を分解した. 酵素活性は, PCG 耐性 Capnocytophaga では基質 ABPC で 7〜33mU/mg, 基質 CEZ で 22〜94mU/mg, Prevotella は両基質とも 6〜149mU/mg を示した. 両菌由来β-lactamase は基質 ABPC より基質 CEZ を多く分解した. β-Lactamase が β-lactam 剤耐性に関与していると考えられる範囲 (group A) を MIC≧50μg/ml と β-lactamase 活性 ≧30mU/mg として分布割合を求めた. Capnocytophaga の場合, IPM と CFTM-PI を除いた全薬剤での分布割合は, 基質 ABPC (7〜14%) より基質 CEZ (43〜79%) で高かった. Prevotella の場合もほぼ同様の傾向を示し, 基質 ABPC の9〜33%に対し基質 CEZ では9〜78%であった. ところが, IPM と CFTM-PI では, 両菌とも group A への分布割合は低かった. EDTA-2Na を用いて外膜透過性の障害を観察した結果, Capnocytophaga では PCG, CEZ およびラタモキセフで, Prevotella では ABPC, セファロリジンで外膜透過性に障害がみられた. 以上の事実は, 急性リンパ性白血病患児の口腔から β-lactam 剤耐性を始めとする多剤耐性 Capnocytophaga と Prevotella が検出され, その耐性に β-lactamase が深く関与するとともに外膜透過性も関係する菌株が存在することを示唆している. また, これら耐性菌に対する化学療法剤として IPM, CFTM-PI, CLDM および OFLX の抗菌性が期待される.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-08-25
著者
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