腫瘍細胞 (CTS細胞) の増殖能におよぼすグリコサミノグリカン糖鎖の影響
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概要
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グリコサミノグリカン (GAG) は, コアタンパクと結合したプロテオグリカンの形で結合組織の間質に存在し, 細胞間マトリックスの組織構築に関与するだけでなく, 細胞の足場となる環境因子として細胞の機能にも影響を与えることが明らかにされている. しかし, 細胞の増殖におよぼすGAGの影響は, GAGが細胞に対して環境因子として間接的に作用することによるのか, あるいは直接的に作用することによるのか, またGAGの糖鎖構造の違いが腫瘍細胞の増殖能にどのような影響を与えるのかは明らかにされていない. 本研究では, 糖鎖構造の異なるGAGを増殖状態の異なる腫瘍細胞に作用させ, GAGが腫瘍細胞の増殖能にどのような影響を与えるのかについて検討を加えた. 浮遊腫瘍細胞の in vitro の培養株であるCTS細胞をコンディションドメディウム中で培養して, 細胞増殖が活発な状態下にあるものと活発でない状態下にある2つの細胞集団を作り, ヒアルロン酸 (HA), コンドロイチン (CH), コンドロイチン4硫酸 (C4S), コンドロイチン6硫酸 (C6S), ケラタン硫酸 (KS), ケラタンポリ硫酸 (KPS), ヘパラン硫酸 (HS), デルマタン硫酸 (DS), およびヘパリン (Hep) をこれらの異なった増殖状態下にあるCTS細胞に作用させた. 細胞増殖におよぼすGAGの影響は, 細胞数の変化を指標として評価した. その結果, GAGを構成するウロン酸としてグルクロン酸のみを含むHA, CH, C4S, およびC6Sは, 増殖が活発なCTS細胞に対して 10^<-2>〜10μg/ml の濃度範囲でピークを示す増殖抑制作用を示し, ウロン酸の位置にガラクトースを配位したKSおよびKPSは, 10^<-4>〜10^2μg/ml の濃度範囲で濃度に依存して直線的に増殖を抑制する作用を示した. また, ウロン酸としてイズロン酸とグルクロン酸を含むDS, HS, およびHepは, 10^<-3>〜10^<-1>μg/ml の濃度範囲をピークとする増殖促進作用を示した. 一方, 増殖が活発でない状態下のCTS細胞に対しては, HA, CH, C4S, およびC6Sは増殖を促進させ, 逆にKSおよびKPSは増殖抑制作用を示した. またDSおよびHSは10^<-2>〜10^<-1>μg/ml 濃度範囲をピークとする増殖促進作用を示し, Hepは濃度に依存した増殖抑制作用を示した. これらの結果から, GAGの糖鎖を構成する単糖の種類がCTS細胞の増殖に異なった影響をおよぼすことが明らかとなった. しかし, GAGの二糖繰り返し構造を構成するN-アセルグルコサミン, N-アセチルガラクトサミン, ガラクトース, グルクロン酸, およびL-イズロン酸を単独で, あるいはこれらの単糖を組み合わせてCTS細胞に作用させても, 細胞増殖になんらの影響もみられなかった. 以上の所見から, GAGの糖鎖構造はCTS細胞によって認識されるが, その作用は分子種によって異なり, また, 細胞の増殖状態によっても異なることが明らかとなった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-06-25
著者
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