歯肉剥離掻爬手術後の創傷治癒過程における根面表層物質に対する線維芽細胞の走化性について
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概要
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本研究は, 種々の根面処理を施した歯肉剥離掻手術爬後の, 各期間における根面表層物質に対する歯周組織由来細胞の走化性について検索した. 加えて, この物質が細胞移動に与える影響についてコラーゲンゲルを用いて検討した. 実験には, サル歯肉結合組織由来, 歯槽骨由来, 歯根膜由来およびラット頭蓋冠由来細胞を使用した. また, 走化性試験に用いる根面溶出液を得るため, まず, ニホンザル12頭に, 歯肉剥離掻爬手術を行った. 根面処理として, セメント質一層掻爬, セメント質一層掻爬後クエン酸塗布, ルートプレーニング, ルートプレーニング後クエン酸塗布を行った. 術後4, 7, 10, 14日に各処理歯を抜去した. 次いで抜去歯根面を掻爬し, その掻爬した根面表層物質をMEM中にいれ振盪した. その上清液を濾過し, 濾液を根面溶出液とした. メンブレンフィルター法による走化性試験の結果, 歯肉結合組織, 歯槽骨および頭蓋冠由来細胞は深層セメント質溶出液に対して最も強い走化性を示した. また, 深層セメント質および脱灰深層セメント質溶出液に対するこれら細胞の走化性は, 術後4, 7日と上昇し, 10日でいったん下降, 14日で再度上昇した. しかし, 象牙質および脱灰象牙質溶出液に対するこれら細胞の走化性はみられなかった. 一方, 歯根膜由来細胞は全ての溶出液に対して走化性を示さなかった. 次いで, 最も高い走化性を示した術後7日の深層セメント質溶出液を添加したコラーゲンゲル内への, 歯肉結合組織由来細胞侵入試験の結果, この溶出液はPDGF, TGF-βと同程度に細胞侵入を促進した. 本実験結果より, 深層セメント質には歯肉結合組織および歯槽骨由来細胞の走化性を促進させる物質が含まれており, この物質によって促進される細胞走化性は術後7日にピークを示すことがわかった. そして, 術後7日の深層セメント質溶出液は, ゲル内の細胞侵入に効果的であることが明らかになった.
- 1992-02-25
著者
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