ラット歯髄のグリコサミノグリカン組成とβ-グリコシダーゼ活性にみられる糖尿病の影響
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概要
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ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット (病態の経過日数により5日群, 10日群および20日群の3群に区分) の下顎切歯歯髄を用いて, グリコサミノグリカン (GAG) の組成を生化学的に, GAG代謝酵素活性の局在を組織化学的に検討し, GAG代謝に及ぼすインスリン作用不足の影響について考察した. N-アセチル-β-グルコサミニダーゼとβ-グルクロニダーゼの活性は, ともに象牙芽細胞に弱陽性, 組織球系細胞に強陽性を示したが, 両活性とも糖尿病による変動は示さなかった. 歯髄乾燥重量当たりの総タンパク量, ヒドロキシプロリン量およびDNA量は糖尿病による変化をほとんど示さなかったが, GAG量 (ウロン酸量) は糖尿病各群で対照群より有意に減少した. 対照群および糖尿病各群の歯髄GAGは共通の分子種から構成され, コンドロイチン硫酸 (CS) が主要成分, ヒアルロン酸, デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸が微量成分として認められた. これらの分子種のうち, CSを主体とする硫酸化GAGは糖尿病の初期から減少したが, CS由来不飽和二糖のHPLC分析では, ΔDi-4S/ΔDi-6S比に糖尿病による変動はみられなかった. これらの結果から, インスリン作用の不足は, 歯髄結合組織の間質マトリックスにも影響を及ぼし, CSを中心とするGAGの合成系を抑制するため, 歯質の石灰化に対して阻害的な要因になることが示唆された.
- 1990-10-25