Bacteroides endodontalisの外膜蛋白の免疫化学的性状ならびに同蛋白に対する根尖性歯周炎病巣部における特異免疫応答 (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
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概要
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Bacteroides endodontalisは, 最初, ヒト感染根管内より分離され, 後にvan Steenbergenら (1984) により糖非分解性の黒色色素産生性Bacteroidesの新しい菌種として報告されたものである. 本研究では, B. endodontalis菌体から外膜蛋白を調製し, その免疫化学的性状を調べ, また, これら菌体表層蛋白抗原に対する根尖性歯周炎患者の病巣部局所における特異免疫応答についても併せて検討した. 外膜蛋白の調製には, GAM培地に嫌気的条件下で37℃, 30時間培養したB. endodontalis HG 370 (=ATCC 35406) 株の凍結乾燥菌体 (WC) を出発材料とした. WCの超音波破砕物を遠心し沈渣を細胞エンベロープ (CE) とし, 洗浄後凍結乾燥した. CEをラウロイルサルコシン酸ナトリウム, ついでリチウムドデシル硫酸により抽出処理したものを, Sephacryl S-200HRカラム, さらにDEAE-Sepharose Fast Flowカラムにより分画, 部分精製し, OMP-IおよびOMP-IIとし, 以後の実験に供した. リポ多糖 (LPS) はWCよりフェノール・水法により得た. リムルステストはQCL-1000を用いた比色法により測定した. OMP-IおよびOMP-IIを家兎に免疫して得た特異抗血清を寒天ゲル内沈降反応に用いた. 透過孔形成能力 (ポーリン活性) はリポソーム膨張法により測定した. 根尖性歯周炎 (組織学的所見により, 歯根嚢胞および歯根肉芽腫に分類) の病巣部組織を酵素処理後, 比重遠心法により単核細胞を得た. Czerkinskyら (1983) の記載を参考にしたELISPOT法によりB. endodontalis菌体表層抗原に対する特異免疫応答の誘導を調べた. 1) SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析の結果, OMP-Iの主要構成成分は31Kよりなり, OMP-IIには15.5K, 27K, 44Kの3本の主要蛋白バンドが認められた. 2) 寒天ゲル内沈降反応の結果, OMP-IとOMP-IIには, 共通抗原が存在するほか, それぞれに特異抗原を含んでいた. 3) リムルステストの結果, OMP-IおよびOMP-IIには, それぞれB. endodontalisのLPSの15.4%および16.2%に相当する活性が認められた. 4) リポソーム膨張法で調べた結果, OMP-Iには明確なポーリン活性が認められたが, OMP-IIには同活性はほとんど認められなかった. 5) 根尖性歯周炎の病巣部組織の酵素処理により, 歯根嚢胞 (13症例) では, 平均1.9×10^5個/100mg (生存率97.2±0.5%), 歯根肉芽腫 (5症例) では平均1.8×10^5個/100mg (生存率96.7±1.6%) の単核細胞が得られた. 6) ELISPOT法により調べた結果, 歯根嚢胞および歯根肉芽腫の病巣部組織の非特異的抗体産生細胞はIgG>IgA>IgMの順に多かった. 7) 同ELISPOT法により歯根嚢胞13症例のうち4症例にOMP-IIに対する特異IgG抗体産生細胞が認められた. 総IgG抗体産生細胞におけるOMP-IIに対する特異抗体産生細胞の占める割合は, 0.006〜0.03%であった. なお, OMP-IならびにLPSに対する特異抗体産生細胞は認められなかった. 一方, 歯根肉芽腫では, B. endodontalisの菌体表層抗原に対する特異抗体産生細胞は検出されなかった. 以上の結果から, B. endodontalisHG370株の主要外膜蛋白であるOMP-Iは, ポーリン活性を保有し, また同外膜蛋白OMP-IIは, 慢性根尖性歯周炎, とくに歯根嚢胞の病巣部において特異免疫応答を誘導することが明らかになった.
- 1990-04-25
著者
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